
「入院のお金は、なんとか払えた。でも、退院したら今度は介護のお金がかかるんですね」
親の入院が落ち着いても、家計の心配が終わるわけではありませんよね。
通院のお金。
薬のお金。
デイサービスや訪問介護のお金。
ひとつずつは支払えていても、重なると負担に感じることがあります。
そんなときに確認したいのが、医療保険と介護保険の自己負担を、1年分合わせて考える制度です。
名前は「高額医療・高額介護合算制度」。医療保険側では「高額介護合算療養費」と呼ばれます。
この記事では、医療ソーシャルワーカー(MSW)として約20年の実務経験をもとに、家族が確認したいポイントを整理します。
必ずお金が戻る制度ではありません。でも、「うちも対象になる?」と確認する価値のある制度です。
※制度情報は2026年11月1日に確認しています。対象期間や保険によって扱いが異なるため、最終的には加入先に確認してください。
医療費と介護費を、1年分まとめて確認する制度があります
この制度は、医療保険と介護保険の対象となる自己負担額を合算し、年齢や所得区分に応じた年間限度額を超えた場合に、申請により払い戻しを受けるものです。
ただし、医療と介護のどちらかの対象自己負担額が0円の場合は対象外です。限度額を超えた金額が500円以下の場合も支給されません。
高額療養費を使った後でも確認できます



「入院のときに、高額療養費を使ったから関係ないですよね?」
そう思いやすいのですが、確認する仕組みが違います。
| 制度 | 主に確認する負担 |
|---|---|
| 高額療養費 | 医療保険の月ごとの対象自己負担 |
| 高額介護サービス費 | 介護保険の月ごとの対象自己負担 |
| 高額医療・高額介護合算制度 | 医療と介護の年間の対象自己負担 |
年間合算では、高額療養費や高額介護サービス費として支給される分を除き、なお残る対象自己負担を確認します。
すでに戻る分を、もう一度受け取る仕組みではありません。
MSWからひとこと:
「月ごとの払い戻しを確認したら、医療と介護を合わせた年間の確認も。それぞれ、別のチェックと考えると分かりやすいですよ」


計算する「1年」は8月から翌年7月
対象期間は、毎年8月1日から翌年7月31日までです。
1月から12月までではありません。
たとえば、2025年8月1日〜2026年7月31日の負担と、2026年8月1日〜2027年7月31日の負担は、別の期間で考えます。
病院や施設の領収書に加え、払い戻しの決定通知も期間ごとにまとめておくと、相談のときに役立ちます。
入院費の負担を軽くする制度は、こちらで詳しく紹介しています。
👉 高額療養費制度とは?入院費の上限・申請方法を確認する
誰と合算できる?同居家族なら全員、ではありません
ここは、家族が迷いやすいところです。
基本は、同じ医療保険の世帯単位で考えます。
住民票上の世帯が同じでも、加入している医療保険が違えば、ひとまとめにはできません。
たとえば、同居するお父さんが後期高齢者医療制度、お母さんが国民健康保険なら、2人分を単純に足すことはできません。
また、子どもが親の支払いを手伝っていても、それだけで子どもの医療費と親の介護費を合算できるわけではありません。
「一緒に住んでいるか」「誰がお金を出したか」だけで判断せず、まずは保険の加入状況を確認しましょう。
70歳未満の方には、医療費を合算する際の月額21,000円以上などの条件もあります。年齢の異なる家族や複数の保険が関わる場合は、窓口に計算を確認するのが確実です。


いくら戻る?56万円は「もらえる金額」ではありません
限度額は、年齢や所得区分によって変わります。
たとえば、後期高齢者医療制度の「一般Ⅰ・一般Ⅱ」の年間限度額は56万円です。
56万円が支給されるのではなく、対象自己負担の合計が56万円を超えた場合に、その超えた分が支給の候補になります。
すべての家庭に56万円の限度額が当てはまるわけでもありません。
一般区分で計算する架空の例
同じ対象期間・合算できる世帯で、次の条件を満たすと仮定します。
| 計算するもの | 金額 |
|---|---|
| 月ごとの払い戻し分などを除いた、対象となる医療の自己負担 | 30万円 |
| 月ごとの払い戻し分などを除いた、対象となる介護の自己負担 | 35万円 |
| 合計 | 65万円 |
| この例に適用する年間限度額 | 56万円 |
| 差額 | 9万円 |
この条件なら、9万円が支給計算の対象となります。
これは仕組みを説明するための架空の例です。実際には、保険の加入状況、所得区分、給付との調整などを保険者が確認します。
また、医療保険と介護保険が自己負担額の比率に応じて分担するため、払い戻しが別々になることがあります。
入院代・施設代のすべてが対象になるわけではありません



「病院と施設に払った金額を、全部足せばいいのかな?」
ここも気をつけたいところです。
次のような費用は、この合算制度の対象には含まれません。
- 入院中の食事代
- 差額ベッド代
- 介護施設の食費・居住費・滞在費
- 日常生活費などの保険外費用
介護保険の限度額を超えた支払いが気になる方は、こちらも参考にしてください。
👉 介護保険の限度額を超えたらどうなる?上限と見直し方
在宅介護でも、保険の支給限度額を超えた全額自己負担分や、福祉用具購入・住宅改修などは、通常の介護サービス利用料とは分けて確認が必要です。
施設への請求総額と、合算できる額は同じではありません。
対象外の費用が重いときは、そこで相談を終わりにしなくて大丈夫です。
食費・居住費の軽減に使う「介護保険負担限度額認定」など、別の制度を確認できる場合があります。所得や資産等の要件があるので、施設の相談員や市区町村へ聞いてみましょう。
申請はどこへ?家族が進める3つの手順
1.保険と対象期間を確認する
まず、親がどの医療保険に加入しているかを確認します。
基本の相談先は、対象期間の基準日である7月31日に加入していた医療保険の窓口です。
- 国民健康保険:市区町村の国民健康保険担当
- 後期高齢者医療制度:市区町村の後期高齢者医療担当
- 協会けんぽ・健康保険組合等:加入先の給付担当
引っ越し、退職、75歳到達などで途中から保険が変わっている場合は、そのことも伝えてください。
死亡などがある場合は基準日等が異なるため、個別の確認が必要です。
2.必要書類と申請期限を聞く
書類は加入先や申請方法によって異なりますが、次のものが求められることがあります。
- 支給申請書
- 本人確認・個人番号確認の書類
- 振込口座を確認できるもの
- 医療保険・介護保険の加入情報
- 以前の加入先などが発行する自己負担額証明書
- 家族が代理申請する場合の委任状など
「領収書を持って行けば、必ず手続きできる」とは限りません。行く前に電話で確認すると、何度も足を運ばずに済みます。
申請には時効があります。基準日の翌日から2年間と案内する自治体がありますが、通知や個別事情で確認が必要なため、通知が来たら期限を確認し、通知がなくても早めに問い合わせることをおすすめします。
3.申請後も決定通知を保管する
申請後すぐに振り込まれるとは限りません。
東京都後期高齢者医療広域連合は、申請から支給まで3〜5か月程度と案内しています。他の地域や保険の所要期間は、申請先で確認してください。
医療と介護で別々の通知や振込になる場合もあるので、支給決定通知は一緒に保管しておきましょう。


お知らせが来なくても、対象外とは限りません
対象になりそうな人へ申請案内が送られることがあります。
ただし、期間中に保険が変わったり、別の都道府県から転入したりした場合など、案内が届かないこともあります。
「何も来ていないから、うちは関係ない」と決めなくて大丈夫です。
反対に、案内が届いても見込計算のため、本計算で金額が変わることもあります。
台東区の後期高齢者医療の案内では、毎年申請が必要とされています。「高額療養費の口座を登録したから、年間合算も全部自動」と思い込まず、その年の案内を確認しましょう。
入院中から退院後まで、お金の相談は早めで大丈夫
申請の話を聞いても、今月の支払いがすぐ軽くなるわけではありません。
だからこそ、費用が心配なときは、払い戻しを待つ前に相談してほしいと思います。
入院中・転院を考えているとき
病院の医療相談室や退院支援担当へ、こんなふうに伝えてみてください。
「治療後に介護も必要になりそうです。入院費だけでなく、退院後の費用も一緒に相談したいです」
治療やリハビリ、医療的なケア、家族の支援状況を整理しながら、転院・自宅・施設の選択肢を考えます。
費用だけで療養先を決める必要はありませんし、必要な治療を自己判断で控える必要もありません。
自宅で介護を続けるとき
ケアマネジャーに、サービスの必要性と負担額を一緒に確認してもらいましょう。
介護保険をまだ申請していない場合や、誰に相談すればよいか分からない場合は、市区町村の介護保険担当や地域包括支援センターが相談先になります。
施設を探しているとき
月額の合計だけでなく、「介護サービス費」「食費・居住費」「保険外の費用」を分けた見積もりをお願いしましょう。
合算制度に入る部分と入らない部分が分かると、先の生活費も考えやすくなります。
MSWからひとこと:
「支払えなくなってからでないと相談できない、ということはありません。『このまま続けられるか心配』という段階で、声をかけて大丈夫です」


よくある質問
- 医療費控除と同じ制度ですか?
-
別の制度です。
今回の合算制度は医療保険・介護保険からの給付で、申請先は保険の窓口です。医療費控除は税金の制度です。
両方を確認することはできますが、医療費控除を計算するときには、その医療費等を補てんする給付との調整が必要です。入金や決定通知を残して、税務署などへ確認してください。
- 高額療養費の申請をしていなくても、全部まとめて相談できますか?
-
まず加入先へ「月ごとの高額療養費と、医療・介護の年間合算の両方を確認したい」と伝えましょう。
手続きが同じとは限らないため、必要な申請を個別に確認してください。
- 通知が届いたら、必ずお金が戻りますか?
-
必ずではありません。案内が見込額に基づく場合は、本計算で変更や不支給になることがあります。
「これからの介護費用を払い続けられるか心配」という方へ。使える制度と相談先をまとめています。
👉 介護でお金がないときに|使える制度と相談先
まとめ|まずは「合算の対象になりますか?」と聞いてみよう
医療費と介護費が重なると、請求書を見るだけで疲れてしまうこともありますよね。
全部の制度を覚える必要はありません。
今日は、次の3つだけ確認してみてください。
- 親が加入している医療保険は何か
- 8月から翌年7月まで、医療と介護の両方に対象自己負担があるか
- 加入先に「高額介護合算療養費の対象になりますか?」と聞けるか
電話でうまく説明できるか心配なら、こちらを読んでも大丈夫です。
親の医療費と介護サービス費の負担が続いています。高額療養費などを使った後でも、高額介護合算療養費の対象になるか確認したいです。対象期間と必要書類、申請期限を教えてください。
自分たちだけで、難しい計算を終わらせてから相談する必要はありません。
家族の暮らしを守るために、使える制度をひとつずつ確認していきましょう。
参考情報・外部リンク
すべて2026年11月1日確認。本文にはURLや追跡パラメータを挿入せず、末尾の参考情報として掲載してください。
- 全国健康保険協会「高額介護合算」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/003/
対象負担、月給付調整、70歳未満の条件、支給基準、申請先。 - 東京都保健医療局「高額介護合算療養費」(2026年8月31日更新)
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kenkou/kokuho/kouki/kougakukaigogassann
後期高齢者医療の年間限度額。 - 東京都後期高齢者医療広域連合「高額介護合算療養費」(2026年3月9日更新)
https://www.tokyo-ikiiki.net/seido/kyufu/1002187/1000526.html
通知、必要書類、2026年3月から一部受付委託、支給所要期間。東京では通知に記載の提出先を優先。 - 台東区「高額介護合算療養費」(2024年2月27日更新)
https://www.city.taito.lg.jp/kurashi/zeikin/kokikorei/kyuufu/gassann.html
毎年申請、案内が届かない場合、見込計算の注意点。数値はより新しい東京都資料とも照合。 - 名古屋市「高額医療・高額介護合算制度」
https://www.city.nagoya.jp/kurashi/hoken/1011736/1011758/1011769/1011771.html
医療保険単位、保険変更時の証明、原則の申請時効・死亡時の扱い。 - 台東区「高額介護(予防)サービス費・高額医療合算介護(予防)サービス費」
https://www.city.taito.lg.jp/kenkohukusi/korei/kaigohokenseido/shikumi/riyousyafutan/kougakukaigo.html
介護負担の計算と対象外費用。 - 厚生労働省「サービスにかかる利用料」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html
介護保険の負担軽減、食費・居住費等の別制度。 - 国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
給付で補てんされた額との調整。 - 墨田区「高額医療・高額介護合算療養費の支給申請」(2026年4月1日更新)
https://www.city.sumida.lg.jp/kurashi/kenkouhoken/kokuminkenkouhoken/kougaku/kougakukaigo.html
申請期限と通知時期の地域差。
参考情報の注意:自治体の案内には申請時効の説明に差があります。本稿は一律の締切日を作らず、基準日・通知・死亡や保険変更等の事情を窓口で確認するよう案内します。検索結果だけで制度改正の施行を断定しません。











