廃用症候群で回復期リハビリ病棟に入れる?入院条件・期間・転院先を元MSWが解説

目次

はじめに|肺炎が治ったのに歩けなくなった?

家族

「母が肺炎で入院しました。肺炎は治ったのに、歩けなくなってしまいました」

家族

「父が入院してから寝たきりに近い状態です。リハビリ病院に転院できますか?」

家族

「病院から廃用症候群と言われました。元の生活に戻れるのでしょうか?」

高齢者では、肺炎や心不全などの病気で入院し、安静にしている期間が長くなることで、筋力や体力が低下することがあります。

このような状態を「廃用症候群」と呼びます。

廃用症候群になると、歩行能力だけでなく、食事、着替え、トイレ、入浴などの日常生活動作(ADL)が低下することがあります。

私は医療ソーシャルワーカー(MSW)として、長年、入院患者さんの退院支援や転院調整に携わってきました。

この記事では、廃用症候群の原因やリハビリ内容に加えて、回復期リハビリテーション病棟に転院できる条件、対象になるケース・ならないケース、退院先の選び方について解説します。

1.廃用症候群とは?

廃用症候群とは、病気やけがなどによって身体を動かす機会が減り、心身の機能が低下した状態です。

特に高齢者では、短期間の安静でも筋力や体力が落ち、入院前にできていたことが難しくなる場合があります。

主な症状には次のようなものがあります。

  • 筋力が低下して立ち上がれない
  • 歩行が不安定になる
  • ベッドから車椅子への移乗が難しくなる
  • 食事や着替えに介助が必要になる
  • 関節が硬くなる
  • 疲れやすくなる
  • 飲み込む力が低下する
  • 活動量の低下に伴い意欲や認知機能にも影響が出る

例えば、入院前は杖を使って一人で歩いていた方が、肺炎で2週間入院した後、立ち上がるだけでも介助が必要になることがあります。

肺炎そのものが治っていても、生活機能が十分に回復していなければ、すぐに自宅へ帰ることが難しくなるのです。

2.廃用症候群になりやすい病気

廃用症候群は、さまざまな病気や治療をきっかけに起こります。

病気・治療廃用症候群につながる例
誤嚥性肺炎発熱や呼吸状態の悪化で安静が続き、筋力や嚥下機能が低下
肺炎治療中の活動量低下によって歩行能力が低下
心不全息切れや全身状態の悪化で動けない期間が続く
尿路感染症・腎盂腎炎発熱や全身状態の悪化により活動量が低下
消化器などの外科手術術後の安静や合併症によってADLが低下
重症感染症長期間の治療や安静によって全身の筋力が低下

ただし、これらの病気で入院したからといって、必ず廃用症候群になるわけではありません。

また、廃用症候群と診断されたからといって、必ず回復期リハビリテーション病棟の対象になるわけでもありません。

3.廃用症候群でも回復期リハビリ病棟に入院できる?

結論からいうと、条件を満たせば入院できます。

回復期リハビリテーション病棟は、脳卒中や大腿骨骨折だけでなく、一定の条件を満たす廃用症候群の患者さんも対象としています。

2026年度の診療報酬制度では、回復期リハビリテーション病棟の対象となる廃用症候群について、次のような条件が定められています。

外科手術または肺炎などの治療時の安静によって廃用症候群となり、手術後または発症後2か月以内に回復期リハビリテーション病棟での算定を開始する状態。

この場合、回復期リハビリテーション病棟の算定上限日数は90日です。

ただし、90日間の入院が保証されるわけではありません。実際の入院期間は、患者さんの状態やリハビリの進捗、退院先などによって異なります。

回復期リハビリ病棟への転院で確認すること

MSWが転院先を検討する際には、主に次のような点を確認します。

  1. 急性疾患や手術があり、その治療時の安静によって廃用症候群になったか
  2. 発症日や手術日からの期間が対象要件を満たしているか
  3. 歩行や食事、排泄などのADLがどの程度低下しているか
  4. 集中的なリハビリを受けられる全身状態か
  5. リハビリによる機能改善が期待できるか
  6. 転院先の病院が受け入れ可能か

病名だけではなく、病気の経過、身体機能、医学的なリハビリの必要性などを総合的に判断します。

4.回復期リハビリ病棟の対象になるケース

ここでは、実際の退院支援をイメージしやすいように、架空の事例を紹介します。

ケース① 誤嚥性肺炎の治療後、歩けなくなった80代女性

【入院前】

  • 一人暮らし
  • 杖を使用して屋内歩行が可能
  • 食事やトイレは自立

【入院後】

誤嚥性肺炎で入院し、抗菌薬治療などを受けました。

肺炎は改善しましたが、治療中の安静によって筋力が低下し、立ち上がりや歩行に介助が必要になりました。

食事も以前より時間がかかり、嚥下機能の評価が必要になっています。

【退院支援】

急性疾患の治療時の安静による廃用症候群であり、発症からの期間などの要件を満たしている場合、回復期リハビリテーション病棟への転院を検討できます。

歩行訓練に加えて、食事動作や嚥下機能の評価・訓練なども重要になります。

ケース② 心不全の治療後、日常生活に介助が必要になった80代男性

【入院前】

  • 妻と二人暮らし
  • 室内は独歩
  • 入浴や着替えは自立

【入院後】

心不全の悪化によって入院し、治療中は活動量が大きく低下しました。

心不全の状態は安定しましたが、歩行時のふらつきや体力低下が残り、トイレや入浴に介助が必要になりました。

【退院支援】

急性疾患の治療時の安静によって廃用症候群となったことが確認され、その他の対象要件も満たす場合には、回復期リハビリテーション病棟への転院が検討されます。

ただし、心不全の医学的管理がどの程度必要か、リハビリを安全に実施できるかなども重要です。

ケース③ 外科手術後、筋力が低下した70代女性

【入院前】

  • 家族と同居
  • 歩行や日常生活は自立

【入院後】

腹部の手術を受け、術後の合併症などにより安静期間が長くなりました。

治療は終了しましたが、歩行や階段昇降が難しくなっています。

【退院支援】

外科手術後の安静による廃用症候群であり、所定の要件を満たしていれば、回復期リハビリテーション病棟への転院を検討できます。

自宅に階段がある場合には、退院後の生活を想定したリハビリも必要になります。

5.回復期リハビリ病棟の対象にならないケース

ここは、ご家族にも知っておいてほしい重要なポイントです。

ケース① 病気ではなく、長期間の活動量低下で歩けなくなった

高齢で外出する機会が減り、自宅で寝ている時間が長くなった結果、筋力が低下したケースです。

廃用症候群のような状態であっても、対象となる急性疾患の治療や外科手術との関係が確認できない場合、回復期リハビリテーション病棟の対象にならないことがあります。

ケース② 肺炎は治ったが、発症から長期間経過している

肺炎の治療後、長期間入院しており、回復期リハビリテーション病棟への転院を検討した時点で、発症後2か月以内という条件を満たせないケースです。

この場合、廃用症候群があっても回復期リハビリテーション病棟の対象にならないことがあります。

ケース③ 廃用症候群の診断はあるが、全身状態が不安定

肺炎の治療後に筋力が低下していても、酸素投与量が多い、感染症の治療が継続している、心不全が不安定などの状況では、集中的なリハビリより医学的管理が優先される場合があります。

制度上の対象条件を満たしていても、転院先の医療機関が受け入れ可能とは限りません。

MSWからのアドバイス

「廃用症候群という病名がついたから、回復期リハビリ病棟に入院できる」と考えないことが大切です。

対象となる病気や手術、発症からの期間、ADLの低下、リハビリの必要性などを確認しながら、転院先を検討します。

6.回復期リハビリ病棟ではどんなリハビリをする?

回復期リハビリテーション病棟では、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)などが、患者さんの状態に応じたリハビリを行います。

理学療法(PT)

  • 起き上がりや立ち上がり
  • ベッドから車椅子への移乗
  • 歩行訓練
  • 階段昇降
  • 筋力や持久力の改善

作業療法(OT)

  • 食事動作
  • 着替え
  • トイレ動作
  • 入浴動作
  • 家事などの生活動作

言語聴覚療法(ST)

  • 飲み込みの評価・訓練
  • 食事形態の検討
  • 発声やコミュニケーションの訓練
  • 必要に応じた認知機能への支援

回復期リハビリテーション病棟では、患者さんの状態や施設の体制に応じて、1日2〜3時間程度のリハビリが行われることもあります。

ただし、全員が同じ時間のリハビリを受けるわけではありません。

高齢者では疲労や持病にも配慮し、無理のない範囲で進めることが重要です。

7.回復期リハビリ病棟に入院できない場合の退院先

回復期リハビリテーション病棟の対象にならない場合でも、リハビリや生活支援が必要なことはあります。

その場合は、本人の身体状況や医療処置の必要性に応じて、別の退院先を検討します。

退院先どのような方に向いている?
地域包括ケア病棟急性期治療後もリハビリや在宅復帰支援が必要な方
介護老人保健施設(老健)要介護認定があり、介護やリハビリを受けながら在宅復帰を目指す方
医療療養病床継続的な医療管理が必要な方
有料老人ホームなど介護を受けながら生活する必要がある方
自宅介護保険サービスなどを組み合わせて生活できる方

地域包括ケア病棟

急性期治療を終えた後、すぐに自宅へ帰ることが難しい方に対して、リハビリや退院支援を行う病棟です。

回復期リハビリテーション病棟の対象にならない廃用症候群の患者さんでも、地域包括ケア病棟への転院を検討できる場合があります。

ただし、リハビリの提供体制や受け入れ条件は病院によって異なります。

介護老人保健施設(老健)

老健は、介護やリハビリを受けながら、在宅復帰や生活機能の維持・改善を目指す施設です。

個別リハビリを20分程度、週に数回行う施設もあります。

また、老健では食事、着替え、トイレ、移動など、日常生活そのものをリハビリとして捉えることも大切です。

実際のリハビリ時間や頻度は施設や本人の状態によって異なります。

医療療養病床

酸素療法、喀痰吸引、経管栄養など、継続的な医療管理が必要な場合には、医療療養病床を検討することがあります。

ただし、医療処置があるから必ず医療療養病床になるわけではありません。

医療区分や患者さんの状態、病院の受け入れ条件によって判断されます。

8.回復期リハビリ病棟と老健、どちらがよい?

ご家族からよく聞かれるのが、「回復期リハビリ病棟と老健では、どちらの方がリハビリをしてもらえますか?」という質問です。

回復期リハビリテーション病棟は、対象疾患や状態の条件を満たした患者さんに対して、集中的なリハビリを提供する医療機関です。

一方、老健は、介護や生活支援を受けながらリハビリを行う介護保険施設です。

単純にリハビリ時間だけで選ぶのではなく、次の点を確認することが大切です。

  • 本人がどの程度のリハビリに耐えられるか
  • 医療処置や病状管理が必要か
  • どの程度ADLの改善が期待できるか
  • 自宅復帰を目指せるか
  • 介護保険の認定状況
  • 家族の介護力や自宅環境

本人に合った環境を選ぶことが、退院後の生活につながります。

公園を散歩する高齢者と付添い(認知症の徘徊・見守りのイメージ)

9.廃用症候群のリハビリ費用はいくら?

回復期リハビリテーション病棟に入院する場合、医療保険が適用されます。

保険診療の自己負担には、高額療養費制度による月額上限が設けられています。

ただし、実際の負担額は年齢、所得区分、入院日数、食事代、病衣代、差額ベッド代などによって異なります。

また、月をまたいで入院する場合は、高額療養費が月ごとに計算されることにも注意が必要です。

費用が心配な場合は、転院先の医事課やMSWに、医療費・食事代・その他の費用を含めた概算を確認しておきましょう。

10.家族が退院前に確認しておきたいこと

廃用症候群になった患者さんの退院支援では、病気が治ったかどうかだけでなく、退院後の生活を具体的に考える必要があります。

確認したいのは次のような点です。

  • 一人で起き上がり、立ち上がれるか
  • トイレまで移動できるか
  • 食事を安全に食べられるか
  • 入浴や着替えに介助が必要か
  • 自宅に段差や階段があるか
  • 家族がどの程度介護できるか
  • 介護保険サービスが必要か

必要に応じて、要介護認定の申請やケアマネジャーとの調整を進めます。

特に高齢者では、退院後の生活環境を整えることが、再入院の予防にもつながります。

11.よくある質問

廃用症候群は治りますか?

原因となった病気や安静期間、年齢、入院前の身体機能などによって異なります。

リハビリによって改善する場合もありますが、必ず元の状態に戻れるわけではありません。

Q.誤嚥性肺炎の後でも回復期リハビリ病棟に入院できますか?

誤嚥性肺炎の治療時の安静によって廃用症候群となり、発症からの期間などの条件を満たす場合には、対象となる可能性があります。

ただし、嚥下障害や医療処置の状況なども含めた個別判断が必要です。

廃用症候群のリハビリは何日できますか?

回復期リハビリテーション病棟の対象となる廃用症候群では、算定上限は90日です。

一方、廃用症候群リハビリテーション料そのものの標準的算定日数は別に定められており、回復期病棟の90日と同じ制度ではありません。

回復期リハビリ病棟に入れなかったらどうなりますか?

リハビリを提供する地域包括ケア病棟、老健、自宅での介護保険サービスなどを検討します。

必要な医療処置や身体状況によっては、医療療養病床なども選択肢になります。

寝たきりに近い状態でもリハビリはできますか?

本人の病状に応じて、関節を動かす訓練、座位保持、起き上がり、移乗などのリハビリを行う場合があります。

ただし、実施できる内容や改善の見込みは個別に判断されます。

12.まとめ|廃用症候群の転院先は、病名だけでは決まらない

廃用症候群は、肺炎や心不全、外科手術などをきっかけに、安静によって身体機能が低下する状態です。

条件を満たせば、回復期リハビリテーション病棟で集中的なリハビリを受けることができます。

しかし、廃用症候群という診断名があるだけでは、回復期リハビリテーション病棟の対象になるとは限りません。

対象となる急性疾患や手術、発症からの期間、ADLの低下、リハビリの必要性などを確認することが大切です。

回復期リハビリテーション病棟への転院が難しい場合でも、地域包括ケア病棟や老健など、ほかの選択肢があります。

ご家族だけで判断するのは難しいため、入院先の医療ソーシャルワーカーに相談しながら、本人に合った療養先や退院先を検討していきましょう。

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