親の介護サービスを増やしたいのに、ケアマネジャーから「今月は介護保険の限度額を超えそうです」と言われたら、不安になりますよね。

「サービスを使えなくなるの?」



「超えた分も1割負担?」



「高額介護サービス費で戻る?」
と迷うご家族は少なくありません。
結論から言うと、介護保険には要支援・要介護度ごとに1か月の支給限度額があり、超過分は原則として全額自己負担です。しかも、超過分は高額介護サービス費の払い戻し対象にも入りません。ただし、すぐに必要な支援を減らすのではなく、ケアプランの優先順位、自治体独自の支援、介護保険外サービス、区分変更申請などを順番に検討できます。
この記事では、元医療ソーシャルワーカーの視点から、要介護度別の限度額、超過時の計算例、似た制度との違い、家族がケアマネジャーへ確認したい項目を分かりやすく解説します。
1.介護保険の限度額を超えたらどうなる?
超えた分は原則として全額自己負担
介護保険の対象となる在宅サービスには、要支援・要介護度ごとに「区分支給限度基準額」が設定されています。限度額の範囲内なら、所得に応じて1〜3割を負担します。
限度額を超えて利用した分は、介護保険が適用されず、原則として10割負担です。サービス自体を利用できなくなるわけではありませんが、家計への影響が急に大きくなります。
超過分は高額介護サービス費で戻らない
高額介護サービス費は、介護保険が適用された範囲の1〜3割負担が所得別の上限を超えた際に、超過額が払い戻される制度です。
区分支給限度基準額を超えて10割負担となった分は、計算対象に入りません。「あとで戻る」と思い込まず、利用前に月額を確認しましょう。
必要な支援を急に減らさない
限度額を超えそうでも、見守りや排泄介助など安全に直結する支援を急に減らすのは避けたい場面があります。まずはケアマネジャーへ相談し、必要性の高い支援を残しながら調整してください。
2.区分支給限度基準額とは
在宅サービスに設けられた月単位の枠
区分支給限度基準額は、在宅で利用する介護保険サービスに対し、1か月間に保険給付を受けられる上限を単位数で定めた仕組みです。
訪問介護、訪問看護、デイサービス、ショートステイ、福祉用具貸与などを組み合わせた合計単位数で確認します。
要介護度が上がると枠も大きくなる
介護の必要性が高い区分ほど、利用できる単位数は増えます。ただし、認定区分が高ければ必ず上限近くまで使うわけではありません。本人の状態、家族の介護力、生活目標に合わせてケアプランを作ります。
金額ではなく単位数で管理する
介護報酬は「単位」で計算され、1単位の金額は地域やサービス種別により約10〜11.40円です。そのため、単位数を単純に10倍した金額は目安であり、実際の請求額とは異なる場合があります。
3.要介護度別の限度額一覧
要支援1・2の上限
要支援の方は、介護予防サービスを中心に利用します。月の上限は次のとおりです。
| 認定区分 | 支給限度基準額 | 1単位10円で換算した目安 |
|---|---|---|
| 要支援1 | 5,032単位 | 50,320円 |
| 要支援2 | 10,531単位 | 105,310円 |
要介護1〜5の上限
| 認定区分 | 支給限度基準額 | 1単位10円で換算した目安 |
| 要介護1 | 16,765単位 | 167,650円 |
| 要介護2 | 19,705単位 | 197,050円 |
| 要介護3 | 27,048単位 | 270,480円 |
| 要介護4 | 30,938単位 | 309,380円 |
| 要介護5 | 36,217単位 | 362,170円 |
表の金額は自己負担額ではない
上欄はサービス総額の目安です。利用者が支払う金額は、限度額内なら原則1〜3割です。さらに、食費、宿泊費、日用品代など介護保険外の費用が加わる場合があります。
4.限度額に含まれる主なサービス
訪問系サービス
訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーションなどが主な対象です。同じ月に複数の事業所を利用しても、単位数を合算します。
通所・短期入所サービス
デイサービス、通所リハビリテーション、ショートステイなども合算対象です。利用回数や加算が増えると、予定より早く限度額へ近づく場合があります。
福祉用具貸与や地域密着型サービス
介護ベッドや車いすなどの福祉用具貸与、一部の地域密着型サービスも対象です。一方、居宅療養管理指導、特定福祉用具購入、住宅改修などは別の枠や扱いがあります。
5.限度額を超えた場合の計算例
要介護2で23万円分を利用した例
要介護2の父が、訪問介護、デイサービス、ショートステイを組み合わせ、1単位10円として月23万円分を利用した例で考えます。
要介護2の限度額は19万7,050円相当です。超過分は次の計算になります。
230,000円 − 197,050円 = 32,950円
この3万2,950円は原則10割負担です。
1割負担なら合計約5万2,655円
限度額内の1割負担は1万9,705円です。そこへ超過分3万2,950円を加えます。
19,705円 + 32,950円 = 52,655円
限度額を少し超えただけでも、自己負担は大きく増えます。実際には地域区分、加算、食費、滞在費なども加わるため、事業所の見積書で確認してください。
どのサービスを超過分にするか確認する
複数サービスを利用している場合、どの利用分を保険給付の対象外として扱うか、事業所との調整が必要になる場合があります。ケアマネジャーへ「10割負担になるサービスと回数」を書面で示してもらいましょう。
6.高額介護サービス費との違い
二つの「上限」は目的が違う
| 制度 | 基準 | 軽減する費用 | 上限超過時 |
| 区分支給限度基準額 | 要支援・要介護度 | 介護保険を使えるサービス量 | 超過分は原則10割負担 |
| 高額介護サービス費 | 世帯・本人の所得 | 限度額内の1〜3割負担 | 所得別上限を超えた分を支給 |
| 負担限度額認定証 | 所得・資産など | 施設や短期入所の食費・居住費 | 認定区分の上限まで負担 |
食費や居住費は別に考える
ショートステイや施設利用の食費、居住費、日常生活費は、区分支給限度基準額や高額介護サービス費の対象外です。低所得の方は、負担限度額認定証の対象になるか自治体へ申請が必要になるので、確認しましょう。
2026年8月の変更点にも注意
2026年8月1日から、高額介護サービス費の低所得区分で使う公的年金等収入金額と合計所得金額の基準の一部が、80万9,000円から82万6,500円へ変更されました。
これは高額介護サービス費の所得判定に関する変更であり、要介護度別の区分支給限度基準額が増えたわけではありません。
7.限度額を超えやすい場面
退院直後に支援を増やした
退院直後は、訪問介護、訪問看護、福祉用具、ショートステイなどを一度に導入する場合があります。医療処置や移動介助が必要になると、想定より単位数が増えやすくなります。
家族が一時的に介護できない
家族の入院、出張、体調不良などで、訪問介護やショートステイを追加する月も上限へ近づきます。短期間だけ超えるのか、今後も続くのかで対処法は変わります。
心身の状態が認定時より重くなった
転倒が増えた、認知症が進んだ、排泄や食事の介助量が増えたなど、認定時より状態が重くなった場合は、現在の要介護度が実態と合っていない可能性があります。
8.限度額を超えそうなときの見直し方
必要性の高い支援から優先する
安全、排泄、服薬、医療処置、食事など、生活や健康に直結する支援を先に確保します。家事援助や回数を機械的に減らすのではなく、本人と家族が困る場面を具体的に伝えましょう。
サービスの組み合わせを調整する
訪問介護の回数、デイサービスの利用時間、福祉用具の種類、ショートステイの日数などを見直します。自治体の総合事業、配食、見守り、移送支援などを組み合わせられる場合もあります。
月をまたいで調整できる予定を確認する
緊急性が低い追加利用や短期入所の日程は、本人の安全を優先したうえで翌月へ分けられる場合があります。ただし、必要な介護を費用だけで先送りしないよう、ケアマネジャーと慎重に判断してください。
9.要介護度が合わないと感じたら
区分変更申請を検討する
心身の状態が認定時より明らかに重くなった場合は、認定の有効期間中でも区分変更申請を検討できます。本人、家族、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所などから自治体へ相談できます。
認定が上がるとは限らない
区分変更申請をしても、必ず要介護度が上がるわけではありません。調査結果と主治医意見書により、同じ区分や低い区分になる可能性もあります。
困っている場面を記録する
転倒回数、夜間の介助、排泄の失敗、服薬管理、徘徊、家族の介護時間などを日付と一緒に記録しましょう。認定調査や主治医への説明で、普段の状態を伝えやすくなります。
10.よくある質問とまとめ
- Q1.限度額を超えるとサービスは利用できませんか
-
利用はできますが、超過分は原則として全額自己負担です。利用前に事業所の料金と超過額を確認してください。
- Q2.月の途中で要介護度が変わったらどうなりますか
-
認定の効力が生じる日や利用状況により計算が変わるため、自治体とケアマネジャーへ個別に確認しましょう。
- Q3.夫婦で介護サービスを使うと限度額を合算できますか
-
区分支給限度基準額は一人ずつ要介護度に応じて管理します。一方、高額介護サービス費は同一世帯の対象負担額を合算できる場合があります。
- Q4.施設入所にも同じ限度額がありますか
-
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などの施設サービスは、在宅サービスの区分支給限度基準額とは異なる仕組みです。食費や居住費も別に発生します。
- Q5.誰に相談すればよいですか
-
担当ケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村の介護保険窓口へ相談できます。サービス利用票と利用票別表、事業所の見積書を手元に置くと話が進みやすくなります。
まとめ
介護保険の区分支給限度基準額を超えた分は、原則として10割負担です。高額介護サービス費で戻る範囲にも含まれません。
限度額を超えそうなときは、次の順番で確認しましょう。
- 今月の利用予定単位数と超過額を確認する
- 安全に直結する支援を優先する
- サービスの回数や組み合わせを見直す
- 自治体独自の支援や介護保険外サービスを調べる
- 状態が重くなっていれば区分変更申請を相談する
費用を抑える視点は大切ですが、本人の安全と家族の生活も同じくらい大切です。数字だけで支援を減らさず、困っている場面をケアマネジャーへ具体的に伝えてください。
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※本記事は介護保険制度の一般的な情報を整理したもので、自治体の認定や個別の法的・医療的判断を代替するものではありません。
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参考資料








