「親の歩行が不安になってきた。手すりや歩行器って、どうやって用意するの?」「介護ベッドは買うと高いけど、レンタルできるの?」——在宅介護が始まると、必ず出てくるのが福祉用具の疑問です。
結論から言うと、福祉用具は介護保険を使えば1〜3割の自己負担でレンタル・購入できます。介護ベッドや車いすは「レンタル」、入浴用いすやポータブルトイレは「購入」と、品目によって扱いが分かれているのがポイントです。
私は病院MSWとして17年間、退院に向けた住環境の調整に数多く関わってきました。この記事では、福祉用具のレンタルと購入の違い・借りられるもの・費用・使い方まで、やさしく解説します。
「母が退院するのに、家のお風呂やトイレが不安です。何を用意すればいいのか分かりません」——70代のお母様の退院を控えた娘さんからのご相談。ケアマネと福祉用具の専門相談員が一緒に自宅を見て、手すりのレンタルと入浴用いすの購入を提案。月々わずかな負担で、お母様が安全に暮らせる環境が整いました。「プロが家を見て選んでくれる」ことを知らない方は、意外と多いのです。
福祉用具とは?介護保険で使える2つの制度
介護保険の福祉用具には、「レンタル(貸与)」と「購入」の2つの制度があります。要介護認定を受けていれば、どちらも1〜3割の自己負担で利用できます。
| 福祉用具レンタル | 特定福祉用具販売(購入) | |
|---|---|---|
| 対象 | 車いす・介護ベッドなど繰り返し使う物 | 入浴・排せつ用など肌に触れる物 |
| 費用 | 月額レンタル料の1〜3割 | 購入額の1〜3割(年間上限10万円) |
| 特徴 | 体の状態に合わせて交換できる | 衛生面からレンタルになじまない物 |
レンタルできる福祉用具【13品目】
繰り返し使うものは基本的にレンタルです。代表的なものは次のとおりです。
- 車いす・車いす付属品
- 特殊寝台(介護ベッド)・付属品(手すり・マットレスなど)
- 手すり(工事不要の置き型)・スロープ
- 歩行器・歩行補助つえ
- 床ずれ防止用具・体位変換器
- 認知症老人徘徊感知機器・移動用リフト など
購入する福祉用具【特定福祉用具】
肌に直接触れる・使い回しに向かないものは購入対象です。年間10万円までが保険の対象で、自己負担はその1〜3割です。
- 入浴用いす(シャワーチェア)・浴槽用手すり
- ポータブルトイレ・自動排せつ処理装置の交換部品
- 入浴補助用具・簡易浴槽 など
購入は都道府県の指定を受けた事業者から買うのが条件です。ネットで安く買っても保険対象にならないことがあるので、ケアマネや相談員に確認しましょう。
福祉用具を使うまでの流れ
- ケアマネジャーに相談する——「歩行が不安」「お風呂が心配」など困りごとを伝える
- 福祉用具専門相談員が自宅を訪問——体の状態と家の環境を見て、合う用具を提案
- 試用・選定——実際に試してから決められる
- 契約・搬入——レンタルなら定期的にメンテナンスもしてくれる
まだ要介護認定を受けていない場合は、まず要介護認定の申請から。どこに相談すればいいか分からないときは地域包括支援センターへ。
工事が必要な「住宅改修」もある
置くだけの手すりは福祉用具レンタルですが、壁に固定する手すりや段差解消の工事は「住宅改修」という別の制度です。こちらは生涯20万円までが保険対象(自己負担1〜3割)。手すり設置・段差解消・滑り防止・引き戸への交換などが対象です。福祉用具と住宅改修を組み合わせると、家の中の安全がぐっと高まります。
福祉用具でも埋められない「人の手」が必要なとき
✅ 見守り・話し相手・付き添いなど人の手が必要な部分をサポート
✅ 介護保険の枠を気にせず必要な分だけ
✅ 通院や外出の付き添いにも対応
✅ 相談は無料
よくある質問
Q. 要支援でも福祉用具は使えますか?
使えますが、要支援・要介護1では原則レンタルできない品目(介護ベッド・車いすなど)があります。状態によっては例外的に認められることもあるので、ケアマネに相談してください。詳しくは要支援と要介護の違いをどうぞ。
Q. レンタルと購入、どちらがお得ですか?
品目で決まっているため選べないことが多いですが、レンタル対象のものはレンタルがおすすめです。体の状態が変わっても交換でき、メンテナンスも受けられるためです。
Q. 福祉用具の費用は介護保険の限度額に含まれますか?
レンタルは毎月の区分支給限度額に含まれます。購入と住宅改修はそれぞれ別枠(購入=年10万円、改修=生涯20万円)です。使いすぎると全額自己負担になるので、ケアプランの中で調整しましょう。
まとめ|この記事のポイント
最後に、この記事のポイントをおさらいします。
- 福祉用具は介護保険で1〜3割負担でレンタル・購入できる
- 車いす・介護ベッドはレンタル、入浴・排せつ用は購入(年10万円まで)
- 介護ベッドは買うと高いがレンタルなら月数百〜千円台で交換も可能
- 使い方はケアマネに相談→専門相談員が自宅訪問→試して選ぶ
- 壁固定の手すりや段差解消は「住宅改修」(生涯20万円まで)の別制度
福祉用具は、親が「自分でできること」を守り、介護する側の負担も減らしてくれる心強い味方です。「これくらい我慢すれば」と思う前に、まずケアマネに相談してみてください。安全な環境は、家族みんなの安心につながります。
