
「退院後も診察は必要。」
「でも、大きな病院まで通い続けるのは難しい……」
そんなときに選択肢となるのが、医師が自宅を定期的に訪れる「訪問診療」です。
とはいえ、家まで来てもらうとなると、気になるのはお金。



「普通の通院より、かなり高いの?」



「毎回、往診料がかかる?」



「年金暮らしでも利用できる?」
家まで医師に来てもらうと聞くと、なんだか“お医者さんの出張サービス”のようで、高額な料金を想像してしまいますよね。
訪問診療には医療保険が使えます。ただし、通院より費用が高くなる傾向があり、患者さんの状態や診療内容によって金額も変わります。
今回は、退院後の生活相談に携わってきた元・医療ソーシャルワーカー(MSW)が、訪問診療にかかる費用を分かりやすく解説します。
※掲載している金額は一般的な目安です。実際の費用は、医療機関、訪問回数、負担割合、検査や処置の内容などによって異なります。
訪問診療と往診は同じもの?
まず知っておきたいのが、「訪問診療」と「往診」の違いです。
訪問診療
医師があらかじめ立てた診療計画に沿って、月1回や月2回など、決められた日時に自宅を訪問します。
慢性疾患の管理、薬の調整、血液検査、点滴、在宅酸素の管理などを継続的に行います。
往診
発熱や急な体調悪化などが起きたとき、患者さんや家族からの依頼を受け、医師が必要と判断して臨時に自宅を訪問します。
簡単にいうと、
- 訪問診療=予定を決めて定期的に診てもらう
- 往診=具合が悪くなったときに臨時で来てもらう
という違いです。
「毎月来てもらう訪問診療」と「急に来てもらう往診」では、費用の計算も異なります。
訪問診療は月にいくらかかる?
自宅で月2回の訪問診療を受ける場合、一般的な自己負担額の目安は次のとおりです。


| 医療費の負担割合 | 1か月の費用目安 |
|---|---|
| 1割負担 | 約6,000~8,000円 |
| 2割負担 | 約12,000~16,000円 |
| 3割負担 | 約18,000~24,000円 |
医療機関によって差がありますが、月2回の標準的な訪問診療の場合、1割負担の方で月7,000円前後を案内している医療機関もあります。
訪問診療の料金には、主に次の費用が含まれます。
- 医師が自宅を訪問して診察する費用
- 1か月を通して病状や薬を管理する費用
- 24時間の連絡・対応体制に関する費用
- 介護保険による居宅療養管理指導費
なお、薬代は別にかかることがあります。
通院より高いの?
通常の外来通院では、診察だけなら自己負担が数百円から数千円程度で済む場合があります。
一方、訪問診療では、医師が自宅を訪問し、継続的に病状を管理します。そのため、医療費だけを比べると、通院より高くなる傾向があります。
ここだけを見ると、



「やっぱり通院したほうが安いじゃない!」
と思いますよね。
でも、ちょっと待ってください。
比較するときは、病院の窓口で支払う医療費だけでなく、通院に伴う「見えない費用」も考える必要があります。
通院にかかる「見えない費用」
通院には、次のような費用や負担が発生します。
- タクシーや介護タクシーの料金
- 家族の交通費
- 家族が仕事を休むことによる収入の減少
- 車いす対応車両の利用料
- 病院での長い待ち時間
- 移動による本人の疲労
- 転倒や体調悪化の危険
例えば、片道3,000円のタクシーを使って月2回通院すると、往復の交通費だけで月12,000円です。
さらに、家族が半日仕事を休んで付き添えば、通院はもはや「診察代だけの問題」ではありません。
医療費だけなら通院のほうが安くても、家族全体の負担まで含めると、訪問診療のほうが続けやすい場合があります。


訪問診療で追加費用が発生するケース
先ほど紹介した月額は、基本的な診療を受けた場合の目安です。
次のような対応があると、別途費用が加わることがあります。
- 夜間や休日の緊急往診
- 血液検査、尿検査、心電図
- 点滴や注射
- 傷や床ずれの処置
- 在宅酸素などの医療機器
- カテーテルの管理
- 看取りに関する対応
- 診断書などの文書作成
- 薬局から薬を届けてもらう費用
- 医療機関が定める交通費
特に確認しておきたいのが、医療機関の交通費や車代です。
診療そのものには医療保険が使えても、交通費などは別に設定されている場合があります。
契約する前に、基本料金だけでなく「医療保険の対象外となる費用はありますか?」と確認しておきましょう。
訪問診療を始める前に確認したい7項目
費用について相談するときは、次の7点を確認しておくと安心です。
- 月に何回の訪問になるか
- 自己負担1割・2割・3割の場合の月額目安
- 薬代が含まれているか
- 交通費や車代が別にかかるか
- 夜間・休日に往診した場合の費用
- 検査や点滴をした場合の追加費用
- 支払方法が現金・振込・口座振替のどれか
私はMSWとして相談を受けるなかで、



「いろいろ説明してもらったけれど、結局、毎月いくら用意しておけばいいですか?」
と聞かれることがよくありました。
制度の難しい説明よりも、ご本人やご家族が一番知りたいのは、そこなんですよね。
遠慮せずに、「うちの場合は月にいくらくらいかかりますか?」と聞いて大丈夫です。
医療費が高くなったら高額療養費制度も確認
1か月の医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合、高額療養費制度の対象になることがあります。
自己負担の上限額は、年齢や所得区分によって異なります。
また、制度の内容は改正される場合があるため、加入している健康保険、区市町村の国民健康保険窓口、後期高齢者医療の窓口などで最新情報を確認しましょう。
医療費と介護費の両方が高額になった場合には、「高額医療・高額介護合算療養費制度」の対象になる可能性もあります。
「制度の名前からして、もう難しい!」
となりそうですが、全部を自分で調べなくても大丈夫です。
病院の相談窓口、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどへ相談してください。


訪問診療は誰でも利用できる?
訪問診療は、「病院で待つのが面倒だから」という理由だけで、誰でも自由に利用できるものではありません。
一般的には、病気や障害、足腰の衰えなどによって、医療機関へ通院することが難しい方が対象です。
例えば、次のような方が検討対象になります。
- 寝たきりや車いすで移動が難しい
- 認知症があり、一人で通院できない
- がんや難病の療養を自宅で続けたい
- 在宅酸素や医療処置が必要
- 通院による疲労や体調悪化が大きい
- 家族だけでは通院介助を続けられない
訪問診療の対象になるかどうかは、本人の病状や通院の困難さを踏まえて医師が判断します。
退院前から相談しておくとスムーズ
退院してから訪問診療を探し始めると、
「薬がもうすぐなくなるのに、次の主治医が決まっていない!」
という困った状況になることがあります。
できれば退院前に、病院の主治医、看護師、退院支援担当者、MSWへ相談してください。
相談するときは、
「退院後、大きな病院へ通い続けるのは難しそうです」
「訪問診療を利用した場合の費用も含めて相談したいです」
と伝えれば大丈夫です。
病院から訪問診療を行うクリニックへ診療情報を送り、必要に応じて退院前に関係者で話し合いを行うこともあります。
まとめ|診察代だけでなく「通い続ける総額」で考えよう
訪問診療は、通常の外来通院より医療費が高くなる傾向があります。
ただし、比較するべきなのは、病院の窓口で支払う診察代だけではありません。
- 本人の医療費
- タクシーなどの交通費
- 家族の付き添い
- 仕事を休む負担
- 移動による本人の疲労
- 緊急時に相談できる安心
これらを合わせて考える必要があります。
大病院への通院を続けるのが正解とも、訪問診療へ切り替えるのが正解とも限りません。
大切なのは、本人と家族が無理なく続けられる方法を選ぶことです。
「病院へ連れて行くだけで、家族全員がぐったり……」
そうなる前に、退院する病院や地域のクリニックへ相談してみてくださいね。
介護や退院後の生活について「どこへ相談したらよいか分からない」という方は、当サイトの「介護・退院後の生活相談」ページからご相談いただけます




※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際の利用条件、診療内容、費用については、担当の医療機関や加入している医療保険へご確認ください。






