退院後、大病院へ通えない!訪問診療・近所のクリニック・救急病院の使い分け

「退院後も、この病院でずっと診てもらえると思っていた」

「近所のクリニックへ行くように言われたけれど、見放されたの?」

「親を病院へ連れて行くのが難しくなってきた。訪問診療を頼めるのかな?」

入院中は医師や看護師がすぐ近くにいますが、退院した途端、家族が病院選びや通院方法を考えなければならないことがあります。

しかも、病院からは「今後は近くのクリニックで診てもらってください」と言われることもあります。

家族としては、

「大きな病院のほうが安心なのに!」

「急に近所の先生へバトンタッチって、医療界の人事異動ですか?」

と戸惑いますよね。

しかし、近所のクリニックへ移ることは、治療を打ち切られたという意味ではありません。

病気の状態や生活状況に合わせて、医療機関の役割を組み合わせることが大切です。

この記事では

医療ソーシャルワーカーとして退院支援に携わってきた経験をもとに、退院後の通院先、訪問診療、地域のクリニック、救急病院の使い分けを分かりやすく解説します。

※この記事は一般的な情報をまとめたものです。受診先や訪問診療の利用については、本人の病状や地域の医療体制によって異なります。主治医や医療機関へご確認ください。

目次

結論|病院は「大きいほど正解」ではなく、役割で使い分ける

退院後の医療機関は、次のように考えると分かりやすくなります。

  • 日常的な体調管理や薬の相談:近所のクリニック
  • 通院が難しい人の定期的な診療:訪問診療
  • 専門的な検査・手術・治療:専門病院や大病院
  • 夜間や休日の急な体調不良:地域の救急医療機関
  • 命に関わる緊急事態:119番

大病院を卒業して地域のクリニックへ移るのは、「もう診ません」という意味ではありません。

普段は近所の医師に診てもらい、詳しい検査や専門治療が必要になったら大病院へ紹介してもらう。

このように、地域の医療機関がチームになって患者さんを支える仕組みです。

介護施設・老人ホームの建物のイラスト

なぜ退院後も大病院へ通い続けられないの?

大病院には大病院の役割がある

大病院には、専門的な検査や手術、重症患者への治療、救急医療などの役割があります。

一方で、血圧の確認や安定している薬の処方など、日常的な診療まで大病院に集中すると、本当に専門的な治療が必要な患者さんを受け入れにくくなります。

そのため国も、大病院と地域の診療所が役割を分担し、紹介や逆紹介によって連携する体制を進めています。

「逆紹介」とは、大病院での専門的な治療が一段落した患者さんを、地域のクリニックなどへ紹介することです。

病院から近所のクリニックを案内されても、「追い出された」と考える必要はありません。

主治医から地域の医師へ、バトンを渡されたと考えてみましょう。

病状が安定したら、地域で診てもらう場合がある

たとえば、手術後の経過が安定し、専門的な治療が頻繁に必要なくなった場合です。

普段の診察や薬の処方は近所のクリニックで受け、半年や1年に一度だけ大病院で専門的な検査を受けることもあります。

これは「大病院かクリニックか」の二者択一ではありません。

両方の医療機関に役割を持ってもらうこともできます。

厚生労働省も、病院の専門医と地域のかかりつけ医が連携し、継続的に治療を管理する取り組みを進めています。

近所のクリニックを利用するメリット

通院にかかる負担を減らせる

高齢になると、電車の乗り換え、長い院内移動、診察までの待ち時間だけでも疲れてしまいます。

本人にとっては「診察15分」でも、家族にとっては、

  • 通院準備
  • 車やタクシーの手配
  • 受付
  • 診察待ち
  • 会計
  • 薬局
  • 帰宅

という一日仕事です。

近所のクリニックであれば、本人と家族の移動時間や待ち時間を減らせる可能性があります。

体調の小さな変化を相談しやすい

日頃から診てもらう医師がいると、「最近食欲が落ちた」「薬を飲むとふらつく」といった小さな変化も相談しやすくなります。

必要に応じて検査を行い、専門的な診療が必要と判断された場合は、大病院へ紹介してもらえます。

生活状況を含めて診てもらいやすい

地域の医師は、患者さんがどこで、誰と、どのように暮らしているかを把握しながら診療することがあります。

病気だけでなく、介護サービス、訪問看護、薬局などと連携してもらえる場合もあります。

通院が難しくなったら「訪問診療」という選択肢がある

訪問診療とは

訪問診療は、通院が難しい患者さんの自宅や入居施設へ医師が定期的に訪問し、計画的に診療する仕組みです。

一般的には、月に何回訪問するかを決め、診察、薬の調整、療養上の相談などを行います。

ただし、「病院へ行くのが面倒だから」という理由だけで、誰でも利用できるとは限りません。

通院が難しい状態かどうかを医師が判断し、医療機関と相談して利用を決めます。

往診との違い

訪問診療と往診は、似ていますが少し違います。

  • 訪問診療:あらかじめ計画を立てて、定期的に自宅を訪問する
  • 往診:体調が急に悪くなったとき、患者さんや家族からの依頼を受けて臨時に訪問する

訪問診療を利用していても、すべての医療機関が24時間いつでも往診できるとは限りません。

契約前に、夜間や休日の連絡方法、緊急時の対応、入院が必要になった場合の連携先を確認しておきましょう。

訪問診療を考えたいタイミング

次のような状況がある場合は、退院前から訪問診療について相談してみましょう。

  • 一人で歩くことが難しい
  • 車いすや寝たきりで移動の負担が大きい
  • 認知症などにより外出が難しい
  • 酸素や医療機器を使用している
  • 通院すると、その後数日寝込んでしまう
  • 家族だけでは病院へ連れて行けない
  • がんなどの療養を自宅で続けたい
  • 自宅での看取りを希望している
  • 入退院を繰り返している

「退院してから探そう」と思っていると、薬がなくなる直前に慌てることがあります。

訪問診療が必要になりそうな場合は、入院中に病棟の看護師、退院支援担当者、医療ソーシャルワーカーへ相談しましょう。

公園を散歩する高齢者と付添い(認知症の徘徊・見守りのイメージ)

退院前に確認しておきたい7つのこと

1.退院後はどこへ受診するのか

退院後も同じ病院へ通うのか、近所のクリニックへ移るのかを確認します。

複数の病気がある場合は、すべてを一つの医療機関で診てもらえるとは限りません。

「心臓は大病院、血圧と日常的な相談は近所のクリニック」のように分かれる場合もあります。

2.次回の受診日はいつか

「落ち着いたら受診してください」では、家族は迷ってしまいます。

退院時に、次の受診日や受診の目安を確認しましょう。

予約が必要かどうかも大切です。

3.紹介状は用意されているか

新しい医療機関へ移るときは、紹介状を用意してもらえるか確認します。

紹介状には、これまでの病気、入院中の治療、検査結果、現在の薬などが記載されます。

口頭で「たぶん肺炎でした」と説明するより、医療情報を正確に引き継げます。

4.薬は何日分あるか

退院時にもらった薬が、次回受診まで足りるか確認します。

薬の名前だけでなく、

  • 何のための薬か
  • いつ飲むか
  • 中止になった薬はどれか
  • 飲み忘れたときはどうするか

も聞いておきましょう。

入院前の薬と退院時の薬を両方飲んでしまわないよう、古い薬の扱いも確認が必要です。

5.どの症状が出たら連絡するのか

発熱、息苦しさ、食欲低下、むくみなど、病気によって注意する症状が異なります。

「何度の熱が出たら連絡するのか」「夜間はどこへ電話するのか」を具体的に確認しましょう。

6.訪問看護や介護サービスは必要か

訪問診療だけで、生活上の困りごとをすべて解決できるわけではありません。

必要に応じて、

  • 訪問看護
  • 訪問介護
  • 訪問リハビリ
  • 通所サービス
  • 福祉用具
  • 配食サービス

などを組み合わせます。

介護保険の申請をしていない場合は、地域包括支援センターや病院の相談員へ相談しましょう。

7.家族が対応できないことを伝える

「家族が何とかします」と無理をして引き受けると、退院後すぐに生活が回らなくなることがあります。

仕事がある、遠方に住んでいる、夜間は対応できない、車を運転できない。

できないことは、退院前に正直に伝えて構いません。

家族の気合いは、医療・介護サービスの一種ではありません。

一次・二次・三次医療機関は、何が違うの?

ここは少し注意が必要です。

「一次・二次・三次」という言葉は、主に救急医療の体制を説明するときに使われます。

単純に「小さい病院・中くらいの病院・大きい病院」という意味ではありません。

病院の廊下(親が倒れて入院したときのイメージ)

初期救急医療

入院を必要としない、比較的軽い症状への救急対応です。

休日夜間急患センターや、地域の当番医などが担います。

たとえば、休日に発熱したけれど意識ははっきりしており、自分で歩ける場合などです。

ただし、症状によって適切な受診先は異なります。

二次救急医療

入院や手術が必要になる可能性のある患者さんへ対応します。

地域の救急病院や病院群輪番制に参加する医療機関などが担います。

骨折、肺炎、脳卒中が疑われる症状など、診察の結果によって入院が必要になる人が対象です。

三次救急医療

生命に関わる重篤な患者さんへ、高度な救命医療を行います。

救命救急センターなどが担い、重いけが、重篤な心疾患、脳血管障害、多臓器不全などへ対応します。

「三次だから一番偉い病院」という話ではありません。

コンビニへ行くために空港の国際線ターミナルを使わないように、症状に合った医療機関を選ぶことが大切です。

大病院へ行くべき症状か迷ったら

突然の強い胸痛、激しい息苦しさ、意識障害、ろれつが回らない、片側の手足が動かない、大量の出血など、命に関わると思われる場合は、迷わず119番へ連絡してください。

救急車を呼ぶべきか、今すぐ病院へ行くべきか迷う場合は、対応地域であれば救急安心センター「#7119」へ相談できます。

#7119では、医師、看護師、相談員などが症状を確認し、救急車の必要性や受診先について助言します。

ただし、実施時間や対象地域は地域によって異なります。緊急性が高いと感じた場合は、#7119を待たずに119番へ連絡してください。

近所のクリニックや訪問診療を探す方法

入院中の病院へ相談する

最初に、現在の主治医、病棟看護師、退院支援担当者、医療ソーシャルワーカーへ相談します。

病状や自宅の場所、必要な医療処置を踏まえて、連携できる医療機関を探してもらえる場合があります。

地域包括支援センターへ相談する

介護や生活上の支援も必要な場合は、親の住所を担当する地域包括支援センターへ相談できます。

介護保険をまだ申請していなくても、家族から相談できます。

医療情報ネットで探す

厚生労働省と都道府県が運営する「医療情報ネット(ナビイ)」では、全国の病院や診療所を検索できます。

診療科目、所在地、診療日、かかりつけ医機能などの条件から探せます。

ただし、サイト上で訪問診療に対応していると表示されていても、受け入れ状況や対象地域は変わることがあります。

利用前に必ず医療機関へ問い合わせましょう。

訪問診療を選ぶときの確認事項

訪問診療を依頼するときは、次の点を確認します。

  • 自宅が訪問地域に含まれているか
  • 月に何回訪問するのか
  • 夜間・休日はどこへ連絡するのか
  • 急変時に往診してもらえるのか
  • 入院が必要な場合の連携病院はあるか
  • 医療費以外に交通費などがかかるか
  • 訪問看護やケアマネジャーと連携できるか
  • 自宅でどこまでの処置に対応できるか
  • 看取りに対応しているか

「訪問診療なら24時間、何でも来てくれる」と思い込まず、対応内容を契約前に確認することが大切です。

こんな使い分けもできる

たとえば、心臓の手術を受けた高齢の親が退院したとします。

退院後の医療体制は、次のように組み合わせられる場合があります。

一人の患者さんを、一つの病院だけで支える必要はありません。

大病院、地域のクリニック、訪問診療、訪問看護、介護事業所が、それぞれの得意分野を担当します。

医療界にもポジションがあります。

全員がエースストライカーでは、ゴール前が大渋滞です。

まとめ|退院後は「一番大きな病院」より「つながる医療」を選ぼう

退院後の医療機関は、大きさだけで選ぶものではありません。

普段の体調管理は近所のクリニック、通院が難しくなったら訪問診療、専門的な検査や治療は大病院、緊急時は救急医療というように、役割を分けて利用できます。

一次・二次・三次は、主に救急医療における役割の違いです。

「とりあえず一番大きな病院へ行けば安心」と考えるのではなく、本人の症状や緊急度に合った医療機関を選びましょう。

退院後の受診先が決まっていない、家族が通院に付き添えない、訪問診療が必要か分からない。

そのような場合は、退院する前に病院の医療ソーシャルワーカーや退院支援担当者へ相談してください。

病院を出てからの生活まで考えてこそ、本当の退院準備です。

「退院日は決まった。でも、次に誰が診るかは決まっていない」

そんな状態にならないよう、退院後の医療チームを早めに作っておきましょう。

参考情報

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