遺言書の書き方・種類と注意点|失敗しないための完全ガイド【図解あり】

「遺言書は財産が多い人が書くもの」と思っていませんか?実はそうではありません。遺言書があるだけで、残された家族の手続きが大幅にラクになり、相続トラブルを防ぐことができます。この記事では、遺言書の種類・書き方・よくある失敗例まで、図解でわかりやすく解説します。

目次

そもそも遺言書が必要な理由

⚠️ 遺言書がない場合に起きること

  • 相続人全員で遺産分割協議が必要になる(全員の合意が必要)
  • 疎遠な親族とも話し合わなければならない
  • 協議がまとまらないと家庭裁判所での調停
  • 手続きに何年もかかることがある
  • その間、不動産の売却・預金の引き出しがすべて止まる

遺言書は「争いが起きそうな家族向け」ではありません。むしろ仲の良い家族ほど、遺言書を書いて手続きをスムーズにしてあげることが、最高の親心です。

遺言書の種類を図解で比較

遺言書には主に3種類あります。それぞれの特徴を図で確認しましょう。

✅ 公正証書遺言
(最もおすすめ)

作り方:公証人が作成・公証役場で保管

費用:財産額により数万円

証人:2名必要

メリット:

  • 法的に最も確実
  • 家庭裁判所の検認が不要
  • 紛失・改ざんの心配なし

デメリット:費用がかかる

📝 自筆証書遺言
(手軽だが注意点あり)

作り方:全文を自分で手書き

費用:無料(法務局保管は990円)

証人:不要

メリット:

  • いつでも一人で書ける
  • 法務局保管なら検認不要
  • 費用ほぼゼロ

デメリット:書き方ミスで無効になることも

🔒 秘密証書遺言
(ほとんど使われない)

作り方:自分で作成・公証人に封印

費用:1万1000円

証人:2名必要

メリット:

  • 内容を秘密にできる

デメリット:検認が必要・実務で使われることは稀

💡 結論:迷ったら「公正証書遺言」一択です。費用はかかりますが、法的に最も確実で家族の手続きが最もラクになります。財産が多い方・相続人が複雑な方は特に公正証書遺言を強くおすすめします。

自筆証書遺言の書き方:5つのルール

自筆証書遺言には法律で定められた厳格なルールがあります。1つでも守れていないと遺言書全体が無効になってしまいます。

1

全文を必ず「手書き」で書く

パソコン打ち・代筆はNG。ただし財産目録だけはパソコン可(2019年改正)。

2

作成日付を「年月日」まで正確に書く

「令和7年5月吉日」はNG。「令和7年5月2日」のように具体的な日付が必要。

3

氏名を自署する

フルネームを手書きで。通称・ペンネームは避けて戸籍上の名前を使う。

4

押印する(認め印でも可)

実印推奨。認め印でも法的には有効だが、実印+印鑑証明があると信頼性が高まる。

5

訂正するときは決まった方法で

修正テープ・修正液はNG。訂正箇所に二重線を引き、欄外に「○字削除○字追加」と書いて署名押印する。

遺言書に書くべき内容チェックリスト

📋 遺言書に必ず記載する内容

項目 記載例 注意点
不動産 「○○市○○町○番○号の土地・建物」 登記簿の記載通りに書く
預貯金 「○○銀行○○支店 口座番号XXXXXXXX」 金融機関名・支店名・口座番号まで
株式・有価証券 「○○証券の株式等一切」 証券会社名と口座番号を記載
受取人の特定 「長男○○(生年月日)に相続させる」 氏名+生年月日で特定する
遺言執行者 「遺言執行者として長女○○を指定する」 手続きをスムーズにするために必ず指定
付言事項 「家族へのメッセージ・分割の理由など」 法的効力はないが相続争い予防に有効

公正証書遺言の作成手順(フロー図)

STEP 1 財産と相続人を整理する

不動産・預貯金・保険などをリストアップ。誰に何を渡すか決める。

STEP 2 証人を2人用意する

相続人・受遺者・未成年者はNG。知人・友人か、公証役場で紹介してもらう。

STEP 3 公証役場に予約・相談する

財産目録と相続人の情報を持参。遺言の内容を伝えて草案を作ってもらう。

STEP 4 草案を確認・修正する

内容に問題がなければ署名・押印。公証人が読み上げ、証人2人も署名押印。

✅ 完成!公証役場で原本を保管

原本は公証役場が保管。遺言者は正本・謄本を受け取る。費用の目安は財産5,000万円で約4万5千円。

遺言書でよくある失敗・無効になるケース

❌ パソコンで全文作成した

自筆証書遺言は財産目録以外は必ず手書き。パソコン打ちは無効になります。

❌ 日付が「吉日」になっている

「令和7年5月吉日」は無効。年月日を正確に記載する必要があります。

❌ 財産の特定が曖昧

「預貯金を長男に」だけでは不十分。口座番号まで記載しないと手続きが困難になります。

❌ 遺留分を無視した内容

「全財産を長男に」と書いても、他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。

❌ 証人が相続人になっている

公正証書遺言の証人に、相続人・受遺者・その配偶者・直系血族はなれません。

❌ 遺言書の場所を誰にも伝えていない

せっかく書いても発見されなければ意味がありません。信頼できる家族か法務局に保管しましょう。

遺留分とは?最低限守らなければならない相続の権利

遺言書があっても、法定相続人には「遺留分」という最低限の相続権が保障されています。遺留分を無視した遺言を書いても、相続人から請求を受ける可能性があります。

📌 遺留分の割合(法定相続分の1/2)

相続人の構成 遺留分の合計 各人の遺留分
配偶者のみ1/2配偶者 1/2
配偶者+子1人1/2配偶者 1/4・子 1/4
子のみ2人1/2各子 1/4
兄弟姉妹なし遺留分なし

※兄弟姉妹には遺留分がありません。特定の兄弟に全財産を渡したい場合は遺言書が有効です。

遺言書と家族信託・任意後見の違いを図解

比較項目 遺言書 家族信託 任意後見
効力が発生するタイミング 死亡後 契約締結後すぐ 認知症になった後
認知症対策 ❌ できない ✅ できる ✅ できる
財産の引き継ぎ先指定 ✅ できる ✅ できる ❌ できない
費用の目安 無料〜数万円 30〜100万円 数万円〜
向いているケース 財産の分け方を決めたい 認知症前から財産管理を任せたい 身上監護も含めて任せたい

最も効果的なのは遺言書+家族信託を組み合わせることです。家族信託で認知症対策をしながら、遺言書で死後の財産分配を明確にすることで、生前から死後まで完全にカバーできます。詳しくは家族信託とは?をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 遺言書は何歳から書けますか?

15歳以上であれば遺言書を書くことができます(民法961条)。ただし認知症が進んでからでは「遺言能力がない」として無効になる可能性があります。元気なうちに早めに作成することを強くおすすめします。

Q2. 遺言書は何度でも書き直せますか?

何度でも書き直すことができます。複数の遺言書がある場合は日付が新しいものが優先されます。古い遺言書の内容と矛盾する部分は、新しい遺言書で自動的に撤回されたとみなされます。

Q3. 遺言書の内容は家族に内緒にできますか?

自筆証書遺言を自宅保管する場合は内緒にできますが、発見されないリスクがあります。公正証書遺言は公証役場に保管されますが、内容は本人しか確認できません。法務局の「自筆証書遺言書保管制度」も内容の秘密を守りながら確実に保管できます。

Q4. 遺言書がなかったらどうなりますか?

相続人全員で遺産分割協議を行い、全員の合意が必要です。相続人が多い・疎遠な親族がいる・認知症の相続人がいるなどの場合、手続きが長期化するリスクがあります。最悪の場合、家庭裁判所での調停・審判となり数年かかるケースもあります。

Q5. 内縁の妻・夫には遺言書で財産を渡せますか?

はい、可能です。内縁の配偶者・認知していない子・お世話になった友人など、法定相続人以外の方への財産の引き継ぎは遺言書でのみ実現できます。「遺贈」という形で明記することで法的効力を持ちます。

Q6. 遺言執行者は誰に頼めばいいですか?

信頼できる相続人(長男・長女など)を指定するケースが多いです。ただし複雑な手続きが想定される場合は弁護士・司法書士などの専門家を指定する方が確実です。遺言執行者は遺言書の中で指定できます。

まとめ:遺言書は「家族への最後のプレゼント」

✅ 今日からできる3つのアクション

  1. 自分の財産と相続人を書き出してみる
  2. 公証役場に電話して無料相談を予約する
  3. 家族に「遺言書を書くつもり」と伝えておく

遺言書は「死」を連想させて縁起が悪いと感じる方もいるかもしれません。しかし実際は、遺言書を残すことは残された家族への最大の思いやりです。手続きの煩雑さ・相続トラブル・家族の不仲を防ぐために、ぜひ元気なうちに一歩踏み出してみてください。

自筆証書遺言の書き方:実際のサンプル文例

実際にどのように書けばよいか、サンプル文例を紹介します。これを参考に自分の状況に合わせて書き換えてください。

遺 言 書

遺言者 山田太郎は、次のとおり遺言する。

第1条(不動産)
遺言者は、下記の不動産を長男 山田一郎(昭和55年○月○日生)に相続させる。
所在 東京都○○区○○町○丁目
地番 ○○番○
地目 宅地 地積 ○○.○○平方メートル
(建物)所在 東京都○○区○○町○丁目○○番地
家屋番号 ○○番
種類 居宅 構造 木造瓦葺2階建 床面積1階○○.○○平方メートル 2階○○.○○平方メートル

第2条(預貯金)
遺言者は、○○銀行○○支店の普通預金(口座番号:1234567)に関する一切の権利を、長女 山田花子(昭和58年○月○日生)に相続させる。

第3条(その他の財産)
遺言者は、上記以外の一切の財産を、配偶者 山田幸子(昭和30年○月○日生)に相続させる。

第4条(遺言執行者)
遺言者は、本遺言の遺言執行者として、長男 山田一郎を指定する。

付言事項
家族みんなが仲良く、助け合って生きていってください。財産は平等ではないかもしれませんが、それぞれの状況を考えてこのように決めました。感謝しています。

令和○年○月○日
住所 東京都○○区○○町○丁目○番○号
氏名 山田 太郎 ㊞

💡 ポイント:不動産は登記簿謄本の記載通りに書きましょう。法務局で登記事項証明書(600円)を取得して、そのまま書き写すのが確実です。

法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を活用しよう

2020年7月から始まった「自筆証書遺言書保管制度」は、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度です。費用は1件3,900円と安く、自筆証書遺言の弱点(紛失・改ざんリスク)を大幅に補えます。

❌ 自宅保管の場合
  • 発見されないリスクがある
  • 改ざん・破棄のリスクがある
  • 家庭裁判所の検認が必要
  • 相続人が知らないまま終わる可能性
✅ 法務局保管の場合
  • 確実に保管される
  • 改ざん・紛失なし
  • 家庭裁判所の検認が不要
  • 死亡後に相続人へ通知される(通知希望の場合)

法務局保管制度を利用するには、遺言者本人が最寄りの法務局(遺言書保管所)に予約して持参する必要があります。代理人による申請はできません。費用は1件3,900円で、公正証書遺言より大幅に安く確実性も高い方法です。

相続トラブルの実態:遺言書があれば防げたケース

家庭裁判所が公表している「司法統計」によると、遺産分割事件の件数は年間約1万2千件以上に上ります。そのうち財産1,000万円以下のケースが約3割を占めており、「うちは大した財産がないから大丈夫」という考えが危険であることがわかります。

ケース1:自宅の相続で兄弟が対立したケース

父が死亡し、遺産は自宅(評価額3,000万円)と預貯金500万円。相続人は長男(同居)・次男(別居)の2人。長男は「自分が介護してきたから自宅は自分が相続すべき」、次男は「法定相続分通り半分ほしい」と主張。現金が少ないため代償分割もできず、家庭裁判所の調停に。解決まで2年かかった。

💬 もし遺言書があれば:「自宅は長男に相続させる。ただし次男に代償金として○○万円を支払うこと」と書いておけば、この争いは起きなかった。

ケース2:内縁の妻が財産を受け取れなかったケース

20年以上同居していた内縁の妻がいたが、遺言書がなかったため法定相続人(前妻との子ども)が全財産を相続。内縁の妻には法的な相続権がなく、住んでいた家からも退去を求められた。

💬 もし遺言書があれば:「内縁の妻○○に自宅を遺贈する」と書くだけで解決できた。内縁関係・事実婚・お世話になった人への財産移転は遺言書でしかできません

遺言書作成の費用相場まとめ

項目 自筆証書
(自宅保管)
自筆証書
(法務局保管)
公正証書遺言
作成費用無料無料財産額により異なる
(目安:2〜10万円)
保管費用無料3,900円無料(役場で保管)
司法書士・弁護士への依頼費用任意(5〜15万円)任意(5〜15万円)任意(10〜30万円)
検認手続き必要(800円〜)不要不要
おすすめ度◎(財産が多い場合)

遺言書を書いた後にやること

遺言書を作成したら終わりではありません。定期的な見直しと周囲への伝達も重要です。

  1. 信頼できる家族に「遺言書を書いた」と伝える:場所・保管方法を伝えておく(内容は秘密でも可)
  2. 3〜5年ごとに内容を見直す:財産の増減・家族構成の変化(離婚・死亡・新生児)に合わせて更新する
  3. 遺言執行者に了承を得ておく:指定した遺言執行者に事前に話しておく
  4. エンディングノートと一緒に保管する:デジタル資産・連絡先リストと合わせて整理しておくと家族がラク

遺言書は一度書いたら終わりではなく、生涯を通じて更新し続けるものです。財産や家族状況が変わるたびに見直すことで、常に最新の意思を反映させることができます。

公正証書遺言の費用はいくら?計算例付きで解説

公正証書遺言の費用は「公証人手数料令」で定められており、財産の価額によって決まります。費用は以下の速算表で確認できます。

財産の価額 手数料
100万円以下5,000円
200万円以下7,000円
500万円以下11,000円
1,000万円以下17,000円
3,000万円以下23,000円
5,000万円以下29,000円
1億円以下43,000円
1億円超段階的に加算

遺言書で複数の相続人に財産を渡す場合は、受取人ごとの財産額に対して手数料がかかります。たとえば総財産5,000万円を3人に分ける場合、合計手数料は約8〜10万円程度が目安です。これに証人手数料(1人につき1万円×2人)や謄本代などが加わります。

遺言書と生前贈与・相続税対策の組み合わせ方

遺言書は「財産の分け方」を決めるものですが、相続税を減らすためには生前贈与や生命保険との組み合わせが有効です。以下の順序で対策を考えると整理しやすいです。

① 生前(今すぐ)

  • 年間110万円の生前贈与を開始
  • 生命保険の非課税枠を活用
  • 家族信託の設定を検討

② 遺言書で決めること

  • 誰に何を相続させるか
  • 遺留分を考慮した分割割合
  • 二次相続を見据えた配分

③ 相続発生後

  • 遺言執行者が手続きを実行
  • 10ヶ月以内に相続税申告
  • 3年以内に不動産登記

遺言書だけで相続対策が完結するわけではありません。生前贈与・生命保険・家族信託・遺言書をセットで考え、専門家(税理士・司法書士・弁護士)と連携して総合的な対策を立てることが理想です。特に財産が多い方・相続人が複数いる方・家族構成が複雑な方は早めに専門家への相談をお勧めします。

遺言書に関する無料相談窓口

相談窓口 得意分野 費用
公証役場公正証書遺言の作成相談無料
法務局(遺言書保管所)自筆証書遺言の保管制度説明無料
司法書士事務所遺言書の文案作成・不動産登記初回無料が多い
弁護士事務所遺留分・相続争いが絡む場合初回無料が多い
税理士事務所相続税と組み合わせた節税対策初回無料が多い
市区町村の法律相談一般的な相続・遺言の疑問無料(予約制)

まず気軽に相談できるのは市区町村の無料法律相談か公証役場です。具体的な文案作成まで進む場合は司法書士、相続税が絡む場合は税理士への相談が最適です。複数の専門家を組み合わせることで、最も効果的な相続対策が立てられます。

遺言書を書くべき人・書かなくてもよい人の判断基準

すべての人が公正証書遺言を作る必要はありません。自分に遺言書が必要かどうか、以下のチェックリストで確認してみましょう。

📝 遺言書を書くべき人
  • 子どもが複数いて財産の分け方を決めたい
  • 前妻・前夫との子どもがいる
  • 内縁・事実婚のパートナーがいる
  • 法定相続人以外に財産を渡したい人がいる
  • 子どもがいない(兄弟姉妹に渡したくない)
  • 不動産をどちらか一人に継がせたい
  • 事業を特定の後継者に引き継がせたい
  • 相続人の中に認知症・障害のある人がいる
  • 寄付・社会貢献に財産を活かしたい
💬 検討でよい人
  • 財産が基礎控除以下で相続税がかからない
  • 相続人が配偶者だけで子どもがいない
  • 相続人が1人だけ
  • 相続人全員が仲良く話し合える関係
  • 財産がほとんどない(預貯金数百万円のみ)

「検討でよい人」に当てはまる場合でも、エンディングノートを書いておくことは強く推奨します。法的効力はなくても、家族への気持ち・財産の場所・希望する葬儀の形などを記しておくだけで、残された家族の負担が大きく減ります。

相続人が認知症になっていたら遺産分割できない?

見落とされがちな重要ポイントとして、相続人の1人が認知症の場合、遺産分割協議ができなくなるという問題があります。

遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。しかし認知症で判断能力が失われた相続人は、法律上「有効な合意」ができません。この場合、家庭裁判所に「成年後見人」の選任を申請する必要があり、その後見人が協議に参加することになります。

⚠️ 成年後見制度を使うと…

  • 費用が毎月2〜5万円かかる(後見人が弁護士等の専門家の場合)
  • 被後見人が生きている間ずっと続く
  • 後見人は「本人の財産を守る」立場のため、節税目的の贈与や積極的な財産運用ができない
  • 手続きに数ヶ月かかり、その間相続が止まる

この問題を避けるためにも、親が元気なうちに家族信託や任意後見を設定しておくことが最善です。また遺言書があれば、相続人が認知症でも遺言執行者が単独で手続きを進められるため、後見制度を利用せずに済むケースも多くあります。

デジタル遺言・SNS・ネット資産への対応

近年急増しているのが「デジタル遺産」に関するトラブルです。ネット銀行・ネット証券・暗号資産・ポイント・SNSアカウントなど、デジタル空間の財産は遺族が存在を知らないまま埋もれてしまうケースが少なくありません。

デジタル資産の種類 相続での扱い 対策
ネット銀行・ネット証券相続財産になる口座情報をエンディングノートに記載
暗号資産(仮想通貨)相続財産になる(申告必要)秘密鍵・取引所情報を安全に保管
ポイント・マイル規約により相続不可の場合も多い生前に使い切るか移行を検討
SNSアカウント財産にはならない(各社規約による)追悼アカウント設定・削除希望を遺言に記載
サブスク・電子書籍規約により承継不可が多い死亡後の解約手続きをエンディングノートに

デジタル資産については現行の遺言書で対応しきれない部分もあります。エンディングノートにIDやパスワードの管理方法(パスワードマネージャーの場所など)を記しておくことが現実的な対策です。ただしパスワードを直接書くのはセキュリティ上のリスクがあるため、「〇〇の金庫の中にある紙に書いてある」といった形で場所だけを記すと安全です。

おひとりさまの終活:遺言書と死後事務委任契約の組み合わせ

子どもや近しい親族がいない「おひとりさま」の場合、遺言書だけでは死後の手続きが完結しません。葬儀・納骨・部屋の片付け・各種解約手続きなどを誰かに頼む必要があります。そこで活用したいのが「死後事務委任契約」です。

📋 死後事務委任契約で依頼できること

  • 葬儀・火葬・納骨の手続き
  • 死亡届・各種行政手続き
  • 賃貸住宅の解約・荷物の整理
  • 銀行口座・クレジットカードの解約
  • 医療費・介護費の清算
  • SNS・メールアカウントの削除
  • ペットの引き渡し先の手配

※弁護士・司法書士・行政書士・NPO法人などに依頼できます。費用の目安は30〜100万円程度(内容による)。

おひとりさまは遺言書(財産の行き先)+死後事務委任契約(死後の手続き)+任意後見契約(認知症対策)の3点セットで老後の安心を確保することを強くおすすめします。特に「自分が死んだ後、迷惑をかけたくない」という方には、今すぐ準備を始めることが最善の選択です。

遺言書の検認とは?手続きの流れをわかりやすく解説

自筆証書遺言(法務局保管を除く)が見つかった場合、家庭裁判所での「検認」という手続きが必要です。検認は遺言書の偽造・変造を防ぐための確認手続きであり、これを省略して遺言書を開封・執行すると5万円以下の過料が科されます。

STEP 1 遺言書を開封せずに保管する

封がされている場合は絶対に開封しない。開封すると5万円以下の過料の対象になります。

STEP 2 家庭裁判所に検認の申立てをする

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立て。費用は収入印紙800円+郵便切手代。

STEP 3 相続人全員に期日の通知が届く

申立てから1〜2ヶ月後に検認期日の通知が届く。出席は任意(出席しなくても検認は行われる)。

STEP 4 検認期日に裁判所で遺言書を開封

裁判官の立会のもとで遺言書を開封。用紙・筆記具・印章などを確認・記録する。

✅ 検認済証明書を取得して手続きへ

検認済みの遺言書と証明書を使って、不動産登記・預金解約などの相続手続きを進めます。

検認手続きには申立てから完了まで通常1〜2ヶ月かかります。この間、不動産や預金の相続手続きを進めることができません。公正証書遺言や法務局保管の自筆証書遺言はこの検認が不要なため、相続手続きをスムーズに進める観点からも優れています。

遺言書にまつわる誤解・都市伝説を解消

❌ 誤解:「長男が全財産を継ぐのが当然」

法律上そのようなルールはありません。遺言書がなければ原則として法定相続分(配偶者・子で均等分割)になります。長男に継がせたい場合は遺言書が必要です。

❌ 誤解:「遺言書があれば絶対にその通りになる」

遺留分を侵害した内容は、相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。また、特定の相続人全員が合意すれば遺言と異なる分割も可能です。

❌ 誤解:「遺言書を書くと縁起が悪い」

欧米では「遺言書を持っていない成人」の方が珍しいほど一般的な準備です。遺言書は家族への最後のプレゼントと考えましょう。

❌ 誤解:「財産が少ないから遺言書は不要」

少額の財産こそ兄弟間で揉めやすいです。家庭裁判所の調停事件の約3割が「財産1,000万円以下」の事案です。

❌ 誤解:「一度書いたら変えられない」

何度でも書き直せます。日付が新しい遺言書が優先されます。財産や家族の状況が変わったら見直しましょう。

❌ 誤解:「口頭での約束も遺言書と同じ効力がある」

「長男に全部やる」と口頭で言っても法的効力はゼロです。遺言書は必ず法律で定められた形式で作成する必要があります。

遺言書を書いた後の定期的な見直しポイント

遺言書は一度作成したら終わりではありません。以下のような変化があったときは、内容を見直すことをおすすめします。

見直しが必要な出来事 見直すべき内容
子どもが生まれた・亡くなった相続人・受取人の変更、法定相続人の数の確認
離婚・再婚した配偶者・継子への財産配分の見直し
不動産を売却・購入した財産目録・特定の不動産に関する条項の更新
相続人の一人が先に亡くなった予備的受遺者(代わりに受け取る人)の指定
財産が大きく増えた・減った各相続人への分配割合・代償金額の見直し
税制改正があった節税効果を最大化する分割方法の再検討

目安として3〜5年に一度、または上記の変化があったタイミングで遺言書を見直す習慣をつけましょう。公正証書遺言を書き直す場合は再度公証役場に行く必要がありますが、内容を最新の状態に保つことが家族への最大の思いやりです。

まとめ:遺言書は「家族への最後のプレゼント」

✅ この記事のポイントまとめ

  • 遺言書がないと相続人全員の合意(遺産分割協議)が必要になり、揉める原因になる
  • 遺言書の種類は3つ。最も確実なのは「公正証書遺言」
  • 自筆証書遺言は5つのルールを守らないと無効になる
  • 法務局の保管制度(3,900円)を使えば自筆証書でも安心
  • 遺留分(相続人の最低保障)を無視した遺言は請求を受ける可能性がある
  • 遺言書は何度でも書き直せる。日付が新しいものが優先される
  • おひとりさまは死後事務委任契約も合わせて検討する

📌 今日からできる3つのアクション

  1. 自分の財産と相続人を書き出す(15分でできます)
  2. 最寄りの公証役場に無料相談の予約を入れる
  3. 家族に「遺言書を書くつもり」と伝えておく(内容は秘密でOK)

遺言書は「死を連想させて縁起が悪い」ものではなく、残された家族へ最大の思いやりを届ける手段です。手続きの煩雑さ・相続トラブル・家族の不仲を防ぐために、ぜひ元気なうちに一歩踏み出してみてください。まずは公証役場への無料相談から始めましょう。

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