「親が認知症になったら財産はどうなる?」という不安を抱える方が急増しています。日本では2025年時点で認知症患者が700万人を超えており、認知症になってから動いても手遅れになるケースが後を絶ちません。銀行口座が凍結されて介護費用が引き出せない、実家の売却も進められない、という事態に陥ってしまう家族が全国に多くいます。そこで注目されているのが「家族信託」です。認知症になる前に財産管理の仕組みを整えることで、万が一の事態にも家族が困らないようにできます。本記事では、元医療ソーシャルワーカー(MSW)として数百件の相談を受けてきた経験をもとに、家族信託の仕組み・費用・メリット・デメリット・手続き方法を完全解説します。
家族信託とは?わかりやすく解説
家族信託とは、財産を持つ親(委託者)が、信頼できる家族(受託者)に財産の管理・運用を任せる制度です。「信託契約」という法的な契約を結ぶことで、親が認知症になった後も、子どもが代わりに財産を管理・処分できるようになります。信託法(2006年改正)に基づく正式な法律制度であり、近年急速に普及しています。家族信託の基本的な仕組みは、委託者(財産を持つ親)が信託契約によって財産を受託者(管理を任される家族)に預け、受託者は財産を管理・運用しますが、その利益は受益者(通常は親本人)が受け取るというものです。従来の「成年後見制度」との最大の違いは、家族が主体的に財産管理できる自由度の高さです。後見制度では家庭裁判所の管理下に置かれ、不動産売却や積極的な財産活用に制約がかかります。一方、家族信託では当事者間で契約内容を設計できるため、柔軟な対応が可能です。
成年後見制度・遺言との3択比較
| 比較項目 | 家族信託 | 成年後見制度 | 遺言書 |
|---|---|---|---|
| 開始のタイミング | 認知症前(元気なうちに契約) | 認知症後(家裁への申立) | いつでも作成可能 |
| 管理者 | 受託者(家族)が主体的に管理 | 成年後見人(家族または専門家) | 遺言執行者が死後に対応 |
| 財産の活用 | 契約内容に従い柔軟に活用可能 | 原則として財産保全が優先 | 死後にのみ効力発生 |
| 不動産売却 | 受託者の判断で可能(契約次第) | 家庭裁判所の許可が必要 | 売却は対応不可(死後の分配のみ) |
| 費用(初期) | 30万〜100万円程度 | 申立費用で10万〜20万円 | 5万〜30万円程度 |
| 費用(継続) | ほぼなし(家族が管理の場合) | 後見人報酬:月2万〜6万円 | なし |
| 死後の対応 | 信託財産の承継先を複数代指定可 | 後見は死亡で終了 | 一代先の分配のみ指定可能 |
家族信託のメリット5つ【元MSWが詳しく解説】
① 認知症になった後も財産を柔軟に管理できる
最大のメリットは「認知症後も財産が凍結されない」点です。銀行口座は名義人が認知症と認定されると、金融機関が口座を凍結することがあります。実際、私がMSWとして勤務していた頃も、「親の預金が引き出せず、入院費が払えない」という事態に直面した家族を何度も見てきました。家族信託を事前に組んでおけば、受託者である子どもが親の財産を管理・運用できるため、介護費用の支払い、自宅の売却、アパート修繕などもスムーズに対応できます。特に不動産をお持ちの方には必須の対策といえます。
② 遺言より柔軟な財産承継が可能
家族信託では「受益者連続型信託」という仕組みにより、「親が亡くなったら子へ、子が亡くなったら孫へ」と財産の承継先を複数代にわたって指定することができます。通常の遺言では一代先までしか指定できませんが、家族信託なら先々の承継まで設計できます。再婚家庭での相続問題(例:再婚相手の連れ子に財産が渡るのを防ぐ)や、障害のある子の将来設計にも活用されています。遺言と家族信託を組み合わせることで、生前・死後の両方を網羅した財産管理体制を整えることができます。
③ 成年後見制度より長期コストが大幅に低い
専門家が成年後見人に選任された場合、月2万〜6万円の報酬が親の死亡まで発生し続けます。10年間で240万〜720万円もの費用がかかることも珍しくありません。一方、家族信託では家族が受託者を務める場合、継続的な報酬は発生しません。初期費用は30万〜100万円かかりますが、長期的にみれば大幅なコスト削減になります。特に親御さんがまだ比較的若く、長期管理が予想される場合ほど家族信託のコストメリットは大きくなります。
④ 二次相続・三次相続まで設計できる
「長男に相続させたいが、長男が先に亡くなった場合は孫に」など、複数段階の相続先を事前に設計できます。これにより、財産が意図しない第三者(例:離婚した元配偶者)に渡るリスクを回避できます。事業承継においても、後継者が決まるまでの暫定的な管理体制として活用できます。障害を持つ子どもへの支援として、親亡き後も信託財産から生活費を支給し続ける「親亡き後問題」の解決策としても注目されています。
⑤ 不動産の共有問題を将来にわたって解決できる
相続によって不動産が複数の子どもの共有状態になると、売却や修繕に全員の同意が必要となり身動きが取れなくなります。実際、相続後の実家が10年以上放置される空き家問題の多くは、この「共有問題」が根本にあります。家族信託では受託者に不動産管理の権限を集約できるため、将来の共有トラブルを予防できます。特に兄弟姉妹間で意見が分かれやすい実家の処分問題において、信託による事前合意は非常に有効な手段です。
家族信託のデメリット・注意点4つ
① 身上監護(生活面の保護)はできない
家族信託で管理できるのは「財産」のみで、入院・施設入所の手続き、介護サービスの契約など「身上監護」と呼ばれる生活面の保護行為はできません。身上監護が必要な場合は、家族信託と併用する形で任意後見制度を利用することが推奨されます。両制度を組み合わせることで、財産管理・生活保護の両方をカバーできます。認知症の進行に備えて、任意後見契約を同時に締結しておくことが理想的です。
② 信託できない財産がある
年金受給権や生活保護受給権などの一身専属的な権利は信託の対象にできません。また、農地(農地法の制約)、抵当権付き不動産(金融機関の承諾が必要)なども信託設定が難しいケースがあります。財産の種類によって対応可否が異なるため、専門家に詳細を確認することが重要です。
③ 公正証書作成が実質的に必須
信託契約書は私署証書でも法的には有効ですが、金融機関での信託口口座開設には公正証書が必要なケースがほとんどです。公正証書の作成には公証人手数料(信託財産の額によって異なる)がかかります。不動産を信託財産に含める場合は信託登記が必要で、登録免許税がかかります(不動産評価額×0.4%)。これらの追加費用も含めてトータルコストを把握しておく必要があります。
④ 専門家費用が高額になる場合がある
家族信託の設計・契約書作成には司法書士または弁護士への依頼が事実上必須です。専門家費用は信託財産の規模によって異なりますが、一般的に30万〜100万円程度かかります。安価な費用で対応する専門家は契約書の質が低いケースもあるため、実績のある専門家を選ぶことが重要です。また、信託財産の収益(賃料収入など)は受益者の所得として確定申告が必要になる場合もあります。
家族信託の費用相場【2026年版】
| 費用項目 | 相場 | 備考 |
|---|---|---|
| 専門家(司法書士・弁護士)への報酬 | 30万〜100万円 | 信託財産の規模・複雑さで変動 |
| 信託契約書の公正証書化費用 | 3万〜10万円 | 公証人手数料(信託財産額による) |
| 不動産の信託登記費用 | 5万〜15万円 | 登録免許税(不動産評価額×0.4%)+司法書士報酬 |
| 信託口口座開設 | 無料〜数万円 | 金融機関によって異なる |
| 信託監督人の費用 | 月1万〜3万円 | 専門家に依頼する場合(任意) |
| 合計目安 | 50万〜150万円程度 | 財産規模が1,000万円〜5,000万円の場合 |
なお、成年後見制度(専門家後見人)との長期コスト比較では、10年間で見ると家族信託の方が大幅に低コストになるケースが多いです。後見人報酬(月3万円)であれば10年で360万円となります。家族信託の初期費用100万円と比較しても、長期的なコスト差は明らかです。費用対効果を考えると、財産規模が大きいほど、また親御さんの年齢が若いほど家族信託のメリットは大きくなります。
家族信託の手続き・流れ【STEP別解説】
STEP1:家族で話し合い・方針決定(目安1〜2週間)
まず「誰が受託者になるか」「どの財産を信託するか」「受益者は誰か」などを家族間で話し合います。受託者になれるのは成年(18歳以上)であれば基本的に誰でも可ですが、財産管理の意欲と能力がある家族を選ぶことが重要です。この段階で将来的な相続についても話し合うと後のトラブルを防げます。なお、親(委託者)が話し合いに主体的に参加できる段階で動くことが最も重要です。
STEP2:専門家への相談・依頼(目安2〜4週間)
家族信託に精通した司法書士または弁護士に相談します。全ての専門家が家族信託に対応しているわけではないため、「民事信託」「家族信託」の実績がある専門家を選ぶことが重要です。複数の専門家から見積もりを取り、費用・実績・対応の丁寧さを比較しましょう。初回無料相談を実施している事務所を利用して、複数の専門家の対応を比べてみることをお勧めします。
STEP3:信託契約書の作成・公正証書化(目安2〜4週間)
専門家が信託契約書の草案を作成し、委託者(親)・受託者(子)が内容を確認・合意します。内容の修正・調整を経て、公証役場で公正証書として認証を受けます。公証役場への予約は2〜3週間待ちになることもあります。公正証書作成当日は委託者本人が公証役場に出向くか、訪問公証を依頼する必要があります。高齢者の場合は出張公証を活用するケースも多いです。
STEP4:信託口口座の開設・不動産登記(目安1〜2週間)
信託財産である預貯金を管理するための「信託口口座」を金融機関に開設します。信託口口座に対応している金融機関は限られており(地方銀行・信用金庫に対応行が多い)、開設に時間がかかることもあります。不動産がある場合は法務局で「信託登記」を行い、登記簿に信託の旨を記録します。この登記により、受託者が適切に財産管理していることが公示され、第三者への対抗力が生まれます。
STEP5:信託の開始・継続的な運用管理
信託登記・口座開設が完了すれば家族信託の開始です。受託者は信託財産を自己の財産と分けて管理(分別管理義務)し、受益者のために適切に運用します。毎年の信託計算書の作成・保存も必要です(信託財産の収益は確定申告が必要な場合あり)。信託の内容に変更が生じた場合は、信託変更契約を締結して対応します。定期的に専門家に報告・確認してもらう体制を整えておくと安心です。
家族信託が向いているケース・向いていないケース
向いているケース
| こんな方に向いています | 理由・効果 |
|---|---|
| 不動産を複数保有している | 認知症後の空き家管理・賃貸経営・売却に備えられる |
| 高齢の親が元気なうちに手を打ちたい | 認知症発症後は信託契約を結べない |
| 兄弟間で将来の相続トラブルが心配 | 財産管理の権限を一元化できる |
| 障害のある子や孫のために財産を残したい | 親亡き後も受益者として継続的に支援できる |
| 事業承継を考えている経営者 | 自社株の議決権を整理しながら承継できる |
| 認知症リスクの高い親族がいる | 早めの手当てで財産凍結リスクを回避 |
向いていないケース・代替手段
| こんな場合は別の手段を検討 | 代替手段 |
|---|---|
| すでに親が認知症を発症している | 法定後見制度の申立を検討 |
| 信頼できる家族がいない | 専門家を受託者とする商事信託・後見制度 |
| 信託財産がほとんどない(数百万円以下) | 費用対効果が低い。遺言書・任意後見で対応 |
| 相続税対策が主目的 | 家族信託に直接の節税効果はない |
家族信託の税務・確定申告について
家族信託を設定した場合、税務上の取り扱いが通常の財産管理とは異なる点があります。正しく理解しておくことで、思わぬ税務リスクを回避できます。
信託財産から生じる収益の課税関係
家族信託では、信託財産から生じた収益(家賃収入・利息など)は受益者の所得として課税されます。受益者が親(委託者)自身である「自益信託」の場合、実質的な課税関係は信託設定前と変わらず、親が確定申告をします。注意が必要なのは、不動産を信託した場合の赤字(損失)の取り扱いです。信託財産から生じた損失は、原則として受益者の他の所得と損益通算することができません(租税特別措置法の制限)。賃貸不動産が赤字体質の場合は、信託設定によって節税効果が失われる可能性があるため、事前に税理士への確認が必須です。
相続税・贈与税との関係
家族信託の設定自体には、原則として贈与税は発生しません。受益者が委託者(親)本人である場合、財産の経済的な利益は依然として親にあるためです。ただし、委託者と受益者が異なる「他益信託」を設定した場合、受益者に贈与税が課税される可能性があります。また、信託期間中に受益者が変更になった場合(例:親から子へ)も贈与税の課税対象となります。相続発生時は、信託財産も通常の財産と同様に相続税の課税対象です。「家族信託=相続税対策」ではありません。相続税対策が主目的の場合は、生命保険の活用や暦年贈与など別の手段を検討しましょう。信託契約書の設計段階から税理士を交えて計画することが重要です。
実際の活用事例【元MSWが見た2つのケース】
事例①:アパートオーナーの認知症対策(70代男性・資産約8,000万円)
相談者は都内でアパート2棟を保有する70代の男性。「父が軽度認知症と診断されてから、外壁修繕の契約が結べない、家賃の収支管理も難しくなってきた」と長男が相談に来られました。このケースでは、父を委託者・受益者、長男を受託者とする家族信託を設定。信託財産にアパート2棟と預貯金3,000万円を組み込みました。信託設定後は長男がアパートの修繕発注・賃貸契約の更新・家賃の収受・リフォーム業者との交渉をすべて自分の判断で行えるようになりました。父が要介護状態になった際の施設費用についても、信託財産から支出できる仕組みを組み込み、老後の生活設計を安心して組み立てることができました。信託設定にかかった費用は約90万円。その後5年間、アパート経営は長男が主体的に運営し、父は安心した老後を過ごしています。
事例②:障害を持つ子どもへの将来設計(60代夫婦・知的障害のある長女)
長女(40代)に軽度知的障害がある60代夫婦からの相談。「自分たちが亡くなった後、長女の生活費・グループホームの費用を誰が管理するのか」という「親なき後問題」への不安でした。このケースでは、両親を委託者・当初受益者、次女を受託者、長女を第二受益者とする受益者連続型信託を設計。両親の生存中は両親が受益者として財産を管理し、両親が亡くなった後は自動的に長女が受益者となり、次女(受託者)が長女の生活費・医療費・施設費用を定期的に支出する仕組みを構築しました。遺言では「次女に全財産を相続させ、長女を扶養する」としか書けませんが、家族信託では長女への継続的な金銭支出を法的に担保できます。費用は約120万円でしたが、両親から「これで安心して老後を迎えられる」と感謝の言葉をいただきました。
受託者の義務と注意点【引き受ける前に確認すべきこと】
受託者(財産管理を任される家族)は、法律上さまざまな義務を負います。引き受ける前に十分理解しておくことが大切です。
①分別管理義務:信託財産は受託者自身の財産とは必ず分けて管理しなければなりません。信託口口座を開設し、自分の口座と混在させることは厳禁です。
②帳簿作成・報告義務:信託財産の収支を記録した帳簿を作成・保存し、受益者(親)から請求があれば報告する義務があります。毎年の信託計算書も作成・保存が必要です。
③善管注意義務:受益者(親)の利益を最優先に、善良な管理者として財産を管理する義務があります。自己利益のために信託財産を使うことは絶対に禁止されています(利益相反行為の禁止)。
④受託者が亡くなった場合の対応:受託者が先に亡くなると信託は機能停止します。必ず後継受託者を信託契約書に定めておくことが重要です。後継者が決まらない場合に備えて、信託法人(専門家法人)を後継受託者に指定する方法もあります。受託者を引き受ける際は「自分に万が一のことがあったらどうするか」まで考えた上で判断しましょう。
家族信託で管理できる財産・できない財産
家族信託の対象となる財産の範囲は意外と広いですが、すべての財産が対象になるわけではありません。事前に把握しておきましょう。
| 区分 | 財産の種類 | ポイント |
|---|---|---|
| 信託できる財産 | 預貯金・現金 | 信託口口座を開設して管理する |
| 信託できる財産 | 不動産(土地・建物) | 信託登記が必要。抵当権付きは金融機関の同意要 |
| 信託できる財産 | 有価証券(株式・投資信託) | 信託対応の証券口座への移管が必要 |
| 信託できる財産 | 自社株(未上場を含む) | 事業承継でも有効活用できる |
| 信託できない財産 | 年金受給権・生活保護受給権 | 一身専属的な権利のため信託不可 |
| 信託できない財産 | 農地 | 農地法の規制により原則不可 |
| 信託できない財産 | 国民健康保険・介護保険の受給権 | 社会保険上の権利は信託対象外 |
| 要確認 | 抵当権付き不動産 | 金融機関の事前同意が必要なケースが多い |
不動産の信託は最も多いケースですが、住宅ローンが残っている場合は金融機関との交渉が必要です。また、区分マンションの場合は管理組合規約の確認も必要となります。株式については、上場株式は証券会社によって信託口座の対応状況が異なるため、事前に証券会社への確認が必須です。自社株については議決権の設計も含めて専門家と慎重に検討することが重要です。
信頼できる専門家の選び方【チェックリスト付き】
家族信託の成否は専門家選びで8割が決まると言っても過言ではありません。以下のチェックポイントを参考に選びましょう。
チェックポイント①:家族信託・民事信託の実績が豊富か
「家族信託○件以上の実績」など具体的な数字を示している専門家を選びましょう。信託専門の勉強会・研究会への参加実績があればさらに安心です。ウェブサイトに家族信託に関する詳しい解説記事や事例紹介があるかも確認ポイントです。
チェックポイント②:初回相談が無料・丁寧にヒアリングしてくれるか
家族の事情は千差万別です。一方的に説明するだけでなく、家族構成・財産内容・将来の希望などをしっかりヒアリングしてくれる専門家を選びましょう。「パッケージ契約」を急ぐような専門家は要注意です。
チェックポイント③:費用が明確で書面で提示されるか
見積もりを書面で提示し、追加費用の可能性も含めて説明してくれる専門家が信頼できます。「財産の○%」という成功報酬型は費用が高額になりやすいため注意が必要です。複数の専門家から相見積もりを取ることをお勧めします。
チェックポイント④:税理士との連携体制があるか
信託の税務処理は複雑です。司法書士・弁護士が税理士と連携して対応できる体制を持っているかも確認しましょう。ワンストップで対応できる事務所であれば、スムーズに手続きを進められます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 家族信託はいくらかかりますか?
A. 一般的な案件で専門家報酬・公正証書費用・登記費用などを合わせて50万〜150万円程度が目安です。信託財産が5,000万円を超えると100万〜200万円以上になることも。ただし、成年後見制度の専門家後見と比べると長期的には安くなるケースが多いです。
Q2. 親が認知症になってからでも家族信託は使えますか?
A. 原則として使えません。家族信託は「委託者(親)が判断能力のある状態」で契約を結ぶ必要があります。軽度認知症であれば医師の診断と専門家の判断により対応できる場合もありますが、認知症が進んで意思能力がないと判断された場合、法定後見制度を利用するしかありません。「まだ元気なうちに」動くことが最重要です。
Q3. 信託銀行と家族信託は何が違いますか?
A. 信託銀行が提供する商事信託は、金融機関が受託者となる専門サービスで費用が高くなります(数百万円〜)。家族信託は家族が受託者となる民事信託で、費用は安く柔軟な設計が可能です。少額の財産や細かな個別事情がある場合は家族信託の方が向いています。
Q4. 家族信託と遺言はどちらが良いですか?
A. 目的が異なるため「どちらが上」ではありません。遺言は死後の財産分配を決めるもので、認知症中の財産管理には対応できません。家族信託は生前の財産管理+死後の承継まで設計できます。理想は家族信託+遺言の併用で、生前・死後の両方をカバーする体制を整えることです。
Q5. 一人っ子でも家族信託できますか?
A. できます。一人っ子が受託者になるケースは非常に多いです。ただし、受託者が一人の場合は「受託者が先に亡くなったら」という事態に備えて、後継受託者(第二受託者)を定めておくことが推奨されます。配偶者や信頼できる親族、あるいは専門家法人を後継受託者に指定しておくと安心です。
Q6. 家族信託はいつから始められますか?年齢制限はありますか?
A. 委託者(親)に判断能力(意思能力)があれば、年齢に制限はありません。ただし、認知症の診断を受けると信託契約を締結できなくなる可能性があります。受託者は成年(18歳以上)であれば誰でもなれますが、財産管理の責任を担える社会人(目安として20代以上)が現実的です。「まだ元気だから大丈夫」と思っているうちに準備しておくことが最大のポイントです。何かのきっかけ(健康診断で異常が見つかった、身近な人が認知症になったなど)を機に動き出すことをお勧めします。
Q7. 家族信託を途中で変更・解除することはできますか?
A. 委託者(親)が判断能力のある間は、信託契約の変更・解除が可能です。信託契約書に変更・解除に関する条項を盛り込んでおくことが一般的です。受益者(親)の同意のもと、委託者と受託者が合意すれば信託内容の変更や信託の終了ができます。ただし、信託財産に不動産が含まれる場合は変更・解除時に再度登記手続きが必要になります。また、委託者が認知症になってから信託を変更・解除することは非常に難しくなるため、変更の必要性が出た場合は速やかに対応することが重要です。信託の終了後は信託財産が帰属先(あらかじめ契約で定めた人)に移転します。
家族信託を始めるための最初の一歩
「家族信託に興味はあるけど、何から始めればいいかわからない」という方のために、具体的な最初の行動を整理しました。
ステップ①:家族で「認知症への備え」について話し合う
まずは「もし親が認知症になったらどうするか」という話題を家族で共有しましょう。財産の内容(不動産・預貯金の規模)と、誰が受託者を担えるかをざっくり確認します。このファーストステップが最も重要です。
ステップ②:家族信託に精通した専門家に無料相談する
司法書士・弁護士の事務所で「民事信託・家族信託の無料相談」を実施しているところを探しましょう。1〜2件相談して、対応の丁寧さ・費用の透明性を比較することをお勧めします。相談時には「保有財産の概要(不動産・預貯金の規模)」「家族構成」「困っていること・心配なこと」をメモしておくとスムーズです。
まとめ:家族信託のポイント一覧
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 認知症リスクを抱える親を持つ家族、財産管理に不安がある方 |
| 開始のタイミング | 親が元気で判断能力があるうちに(早ければ早いほど良い) |
| 費用目安 | 50万〜150万円(初期費用)、継続費用はほぼなし(家族が受託者の場合) |
| 最大のメリット | 認知症後も財産凍結されず、家族が主体的・柔軟に管理できる |
| 主なデメリット | 身上監護はできない、専門家費用がかかる、信託できない財産もある |
| 手続き期間の目安 | 2〜3ヶ月(専門家相談〜信託開始まで) |
| 依頼先 | 家族信託に精通した司法書士または弁護士(複数社を比較推奨) |
| 成年後見との最大の違い | 家族が主体的・自由度高く管理できる点が最大の違い |
家族信託は、認知症という予期せぬ事態に備える「生前の財産管理対策」として非常に有効な手段です。しかし、設計を誤ると思わぬトラブルにつながることも。まずは家族信託の実績がある専門家に無料相談し、自分の家族の状況に合ったプランを設計してもらうことが第一歩です。「まだ大丈夫」と思っているうちに手を打てるかどうかが、家族の将来を大きく左右します。今日から準備を始めましょう。