親の歩行が不安定になった、入浴や買い物に手助けが必要になった――そんな変化に気づいても、

「まだ申請は早いのでは…」



「どこへ相談すればよいの?」
と迷う家族は少なくありません。
要介護認定は、介護保険サービスを利用するための大切な入口です。ただし、病名の重さだけで決まる仕組みではなく、毎日の生活でどれほど介助が必要かを総合的に確認します。
私は医療ソーシャルワーカーとして、申請の遅れから家族の負担が急に重くなる場面を見てきました。
この記事では、申請先、必要書類、認定調査、主治医意見書、結果通知後の動きまで順番に解説します。家族の具体例も交え、調査時に普段の様子を正しく伝える準備も紹介します。全部を家族だけで抱えず、地域包括支援センターや市区町村の窓口を頼りながら進めてください。
1.要介護認定とは
介護保険サービスを利用する入口
要介護認定は、日常生活で必要な介助量や支援の程度を判定する仕組みです。訪問介護、通所介護、福祉用具、ショートステイなど、介護保険サービスの多くは認定後に利用します。
申請先は、本人が住民登録をしている市区町村です。最初の相談は介護保険担当窓口のほか、地域包括支援センターでも受けられます。
病名の重さだけでは決まらない
要介護度は、病気の重さと必ずしも一致しません。厚生労働省は、介護サービスの必要度、つまり日常で生じる「介護の手間」を基に判定すると説明しています。
歩けても認知症による見守りが欠かせない人、重い病気があっても身の回りの動作を一人で行える人など、生活状況によって判定は変わります。
申請を検討したいサイン



なんだか、転倒することが増えた



飲み忘れが多くて、服薬管理が難しい



最近、入浴を避けるようになった…



同じ物を何度も買ってくることが増えたな…
など、家族の見守り時間が増えたときは相談の目安です。退院後すぐに介助が必要になりそうな場合は、入院中から病院の相談員へ声をかけましょう。
本人が申請を嫌がる場合も、まず家族だけで地域包括支援センターへ相談できます。
2.申請できる人と対象者
65歳以上の人
65歳以上の第1号被保険者は、原因を問わず、日常生活で介護や支援が必要になった際に申請できます。「寝たきりではないから対象外」と決めつけず、困っている動作や見守りの状況を相談窓口へ伝えてください。
40歳から64歳の人
40歳から64歳の第2号被保険者は、医療保険に加入し、国が定める特定疾病が原因で介護や支援が必要な場合に対象となります。特定疾病へ該当するか分からない場合は、主治医または市区町村へ確認しましょう。
家族や専門職による申請
本人が窓口へ行けない場合、家族による申請が可能です。指定居宅介護支援事業者、地域包括支援センター、介護保険施設などが申請を代行できる場合もあります。
必要な委任関係や本人確認書類は自治体によって異なるため、訪問前に電話で確認すると安心です。
3.申請前に準備する内容
介護保険被保険者証など
一般的には、要介護・要支援認定申請書と介護保険被保険者証を用意します。40歳から64歳の人は、資格確認書など医療保険の加入資格を確認できる書類も必要です。
本人・代理人の確認書類やマイナンバー関連書類を求める自治体もあるため、公式サイトまたは担当窓口で確認してください。



介護保険被保険者証がなくても、申請は可能です!
主治医の情報
申請書には、主治医の氏名、医療機関名、診療科などを記入する欄があります。市区町村が主治医へ意見書の作成を依頼するため、事前に「要介護認定を申請する予定です」と伝えておくと進みやすくなります。
主治医がいない場合は、市区町村の指定医による診察が必要になる場合があります。
日常生活の困りごとメモ
認定調査では、その日の調子だけでなく、普段の介助や見守りの状態を伝える必要があります。次の内容を1週間ほど記録すると整理しやすくなります。
- 立ち上がり、歩行、排泄、入浴、着替えで必要な手助け
- 服薬忘れ、火の消し忘れ、迷子、昼夜逆転などの頻度
- 家族が声をかける回数や見守りに使う時間
- 体調の良い日と悪い日の差
- 最近起きた転倒や受診の状況
4.申請の手順
市区町村の窓口へ提出する
本人の住所地にある介護保険担当窓口へ申請書を提出します。地域包括支援センターで相談し、提出方法を案内してもらう流れでも構いません。
申請書を受理した日が基準になるため、介護が必要だと感じたら早めに動きましょう。
郵送やオンライン申請を確認する
郵送やマイナポータルの「ぴったりサービス」に対応する自治体もあります。ただし、利用できる手続きや添付書類は地域によって異なります。
オンライン申請でも、追加書類の郵送や電話確認が入る場合があります。
申請や意見書作成の自己負担
要介護認定の申請に手数料はかかりません。市区町村の依頼で作成される主治医意見書も、申請者の自己負担はありません。
指定医の受診や診療に伴う費用など、別の負担が生じる可能性は担当窓口へ確認してください。
5.申請後から認定までの流れ
認定調査
市区町村の調査員などが自宅、病院、施設へ訪問し、本人の心身の状態や生活環境を確認します。家族しか分からない様子がある場合は、可能な範囲で家族も同席しましょう。
本人の前では話しにくい内容を、調査員へ別に伝えられるか事前に相談しても構いません。
主治医意見書
市区町村から依頼を受けた主治医が、病気や心身の状態、医療上の注意点などを記載します。最近受診していない場合、主治医から受診を求められる可能性があります。
家族が診察へ同行し、生活上の変化を短いメモで共有すると、普段の様子が伝わりやすくなります。
一次判定と二次判定
認定調査の結果と主治医意見書の一部を基に、全国共通の方法で一次判定を行います。その後、保健・医療・福祉の専門家で構成される介護認定審査会が、特記事項や主治医意見書も踏まえて二次判定を行います。
最終的な認定結果は市区町村から通知されます。



申請から結果が出るまで、1ヶ月半前後かかります。その前に介護保険を利用したい場合には窓口に相談してみてください!
6.認定調査で普段の状態を伝えるポイント
「できる」と「している」を分ける
調査当日だけ無理をして歩けても、普段は家族の支えが必要なら、その差を伝えます。「手すりがあれば立てる」「夜間は一人でトイレへ行けない」のように条件を添えると伝わりやすくなります。
本人の自尊心を守りつつ、日常の介助量を正確に共有する姿勢が大切です。
回数と頻度で説明する
「ときどき忘れる」だけでは状況が伝わりにくいため、「薬を週3回ほど忘れる」「夜中に2回起き、毎回付き添う」など、直近の頻度を示します。
失敗した場面だけでなく、家族の声かけや準備があるから生活できている点も説明してください。
体調の波を伝える
認知症、神経難病、心不全などでは、日によって状態が変わる場合があります。調査日は元気でも、悪い日の状態や月内の頻度をメモで示しましょう。
入院中の調査では、退院後の住環境や家族が提供できる支援の範囲も共有します。
7.家族の具体例
78歳の母を支える娘の迷い
【個人が特定されないよう再構成した事例です】
一人暮らしの78歳の母は、家の中を歩けていたため、50歳の娘は申請を先延ばしにしていました。しかし、薬の飲み忘れ、鍋の焦げつき、入浴回数の減少が重なり、娘は週4回通って生活を支えるようになりました。
相談前に整理した内容
娘は地域包括支援センターへ相談し、1週間の生活メモを作りました。母が一人で行えた動作だけでなく、電話での服薬確認、買い物の代行、火元確認など、離れて行っていた支援も書き出しました。
認定調査には娘が同席し、母が「全部できます」と答えた項目へ、普段必要な声かけや見守りを補足しました。
家族だけで抱えない変化
申請をきっかけに、家族は介護保険サービスだけでなく、地域の見守りや相談先も知りました。認定区分は個別審査で決まりますが、生活上の負担を見える形にすると、必要な支援を専門職と話し合いやすくなります。
「まだ早い」と耐えるより、困り始めた段階で相談する姿勢が家族の余力を守ります。
8.認定結果が届いた後
結果通知は原則30日以内
申請から認定通知までは原則30日以内です。ただし、認定調査や主治医意見書の進み方により、30日を超える場合があります。
連絡がないまま長期間過ぎている場合は、市区町村の担当窓口へ進捗を確認してください。
認定区分を確認する
結果は、要支援1・2、要介護1~5、非該当のいずれかです。認定通知書と介護保険被保険者証を確認し、有効期間も手帳やカレンダーへ控えましょう。
状態が大きく変わった場合は、有効期間の途中でも区分変更申請を検討できます。
ケアプランを作成する
要介護1~5で在宅サービスを利用する人は、居宅介護支援事業者へ相談します。要支援1・2の人は、地域包括支援センターなどが介護予防ケアプランを支援します。
利用したいサービスだけでなく、本人が続けたい生活や家族が無理なく担える範囲も伝えてください。
9.結果を待てない場合や判定に迷う場合
認定前にサービスが必要な場合
退院日が迫っている、家族の介護が限界に近いなど、結果を待てない場合は、地域包括支援センターやケアマネジャーへ早めに相談します。暫定ケアプランで利用できるサービスもあります。
見込みと実際の認定区分が異なると自己負担が増える場合もあるため、利用範囲は専門職と慎重に決めましょう。
心身の状態が変わった場合
認定後に転倒や入院などで介助量が増えた場合、区分変更申請が可能です。現在の認定区分のまま無理を続けず、担当ケアマネジャーや市区町村へ相談してください。
急な変化は医療的な確認が必要な場合もあるため、体調面は主治医へ伝えます。
非該当でも使える支援
非該当でも、市区町村の地域支援事業や生活支援サービスを利用できる場合があります。基本チェックリストによって、介護予防・生活支援サービスへつながる地域もあります。
結果だけで諦めず、地域包括支援センターへ利用可能な支援を確認しましょう。
10.要介護認定のよくある質問
- Q1.家族だけで相談へ行ってもよいですか?
-
はい。本人が外出できない場合や申請を嫌がる場合も、家族だけで市区町村や地域包括支援センターへ相談できます。本人への説明方法も一緒に考えてもらいましょう。
- Q2.主治医がいない場合は申請できませんか?
-
申請は可能です。主治医がいない場合は、市区町村が指定する医師の診察を受ける流れがあります。申請窓口で早めに伝えてください。
- Q3.入院中でも申請できますか?
-
申請できます。退院後に介護サービスが必要になりそうなら、病院の医療ソーシャルワーカーや退院支援担当者へ相談してください。病状が安定してから認定調査の日程を組む場合もあります。
- Q4.認定にはどれくらい時間がかかりますか?
-
結果通知は申請から原則30日以内ですが、調査や主治医意見書の状況によって遅れる場合があります。急いでサービスが必要なら、結果を待たず相談窓口へ連絡してください。
- Q5.想定より軽い判定だった場合は?
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まず担当窓口やケアマネジャーへ相談し、認定調査の内容や現在利用できる支援を確認します。状態が変わっていれば区分変更申請、不服がある場合は都道府県の介護保険審査会へ審査請求する方法があります。
まとめ|申請前の生活メモが家族を助ける
要介護認定は、家族が介護を続けられなくなってから慌てて申請する制度ではありません。
「以前より見守りが増えた」「退院後の生活が不安」と感じた段階で、市区町村や地域包括支援センターへ相談できます。申請時は、必要書類と主治医の情報を確認し、普段の介助内容を短いメモにまとめておきましょう。
認定調査では、本人がその日にできた動作だけでなく、日頃の声かけ、準備、付き添い、体調の波も具体的に伝えます。結果通知後は、認定区分に応じてケアマネジャーなどとケアプランを作成します。
非該当でも地域の支援へつながる可能性があります。家族だけで正解を出そうとせず、制度と専門職を上手に頼り、本人と家族の暮らしを守る一歩にしてください。








