
「親が亡くなった後、実家の片付けはいつから始めればいいの?」



「遠方に住んでいるので、帰省中に一気に捨てても大丈夫?」



「兄弟から早く片付けようと言われたけれど、気持ちが追いつかない」
親が亡くなった後の実家には、家具や衣類だけでなく、通帳、保険証券、契約書、写真など、長い年月をかけて積み重なった物が残されています。
片付けを急ぎたくなる一方で、相続人の確認や財産調査をする前に処分すると、後から困ることもあります。
社会福祉士・医療ソーシャルワーカーとして約20年、患者さんとご家族の生活相談に関わってきた経験をもとに、親が亡くなった後の実家を片付ける順番と注意点を解説します。
先に結論
実家の安全確認や傷みやすい物の整理は早めに始めて構いません。ただし、相続人・遺言書・財産・負債を確認するまでは、重要書類や価値の判断が難しい物を勝手に捨てないことが大切です。
親が亡くなった後の実家の片付けはいつから?
遺品整理を始める時期に、法律で定められた一律の期限はありません。
ただし、次のような事情によって優先順位は変わります。
- 賃貸住宅で退去期限がある
- 空き家になり、防犯や火災が心配
- 生ごみや冷蔵庫の食品が残っている
- 遠方に住んでおり、帰省できる日が限られている
- 相続放棄を検討している
- 兄弟姉妹など複数の相続人がいる
まず行うのは「全部捨てること」ではなく、家の安全を守りながら、必要な物を見つける作業です。
気持ちが落ち着いていない場合は、形見や写真の整理を後回しにしても大丈夫です。
実家の片付けを始める前に確認する7つのこと
1.相続人全員に連絡する
実家にある物は、たとえ古い家具や日用品であっても、相続財産に含まれる可能性があります。
一人の判断で処分すると、「残してほしかった」「価値のある物だった」と、兄弟姉妹や親族とのトラブルになることがあります。
片付けを始める前に、次の内容を共有しましょう。
- いつから片付けるか
- 誰が立ち会うか
- 残す物と処分する物の決め方
- 費用を誰が負担するか
- 写真や形見をどのように分けるか
遠方の家族には、処分前の写真をLINEなどで送り、返答期限を決める方法もあります。
2.遺言書がないか確認する
机、金庫、仏壇、書類棚などに遺言書が保管されていないか確認します。
封印のある自筆証書遺言を見つけた場合は、勝手に開封せず、家庭裁判所へ確認してください。法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していた遺言書は、家庭裁判所の検認が不要です。
遺言書があるかどうかわからない場合は、公証役場や法務局への確認が必要になることもあります。
3.財産と負債がわかる書類を探す
家具や衣類を処分する前に、次の書類を確保します。
- 預貯金通帳、キャッシュカード
- 保険証券
- 年金関係の書類
- 不動産の権利証、登記識別情報、固定資産税通知書
- 株式、投資信託、証券会社からの郵便物
- クレジットカード、ローン、借入金の明細
- 税金、公共料金、介護・医療費の請求書
- 携帯電話、インターネット、定期購入の契約書
- 印鑑、マイナンバーカード、身分証明書
郵便物や手帳、スマートフォンには、故人の契約や交友関係を知る手掛かりがあります。内容を確認する前にまとめて捨てないようにしましょう。
4.相続放棄を考えているなら、処分前に相談する
相続では、預貯金や不動産だけでなく、借金や未払い金を引き継ぐ可能性もあります。
相続財産を処分した場合、相続を承認したと判断される可能性があります。相続放棄を検討しているときは、故人の物を売ったり、多量に廃棄したりする前に、家庭裁判所や弁護士などへ確認してください。
相続放棄は、原則として自分のために相続が始まったことを知ったときから3か月以内です。
家の腐敗物を片付ける、雨漏りを防ぐなど、財産を守るために必要な行為と、財産を自分のものとして処分する行為では意味が異なります。判断が難しいため、自己判断で進めないことが大切です。


5.最初に「残す・保留・処分」の3つに分ける
片付けでは、すぐに「捨てる・捨てない」を決めようとすると疲れてしまいます。
まずは次の3つに分けましょう。
残す物
- 重要書類
- 通帳、印鑑、貴金属
- 遺言書
- 家族が形見として希望した物
- 高価な可能性がある物
保留する物
- 写真、手紙、日記
- 判断に迷う衣類や趣味の物
- 誰の所有物かわからない物
- 売却価値がわからない物
処分を検討する物
- 腐敗した食品
- 明らかなごみ
- 個人情報が含まれない消耗品
- 相続人全員が処分に同意した物
保留箱には日付を記入し、「3か月後にもう一度見る」と決めると、作業が止まりにくくなります。
6.実家の防犯・維持管理を先に行う
空き家になった実家は、片付けだけでなく管理も必要です。
- 戸締まりと鍵の確認
- 冷蔵庫内の食品処分
- 水道・ガス・電気の使用状況確認
- 郵便物の転送や定期的な回収
- 庭木や雑草の管理
- 雨漏り、漏水、害虫の確認
- 火災保険の契約状況確認
電気や水道は、片付けや清掃で使うことがあります。すぐに解約せず、作業予定を決めてから判断しましょう。
7.自分で難しい範囲だけ業者へ依頼する
遺品整理は、すべてを家族だけで行う必要はありません。
次のような場合は、業者への依頼を検討してよいでしょう。
- 遠方で何度も通えない
- 家具や家電が多い
- 階段や狭い通路があり、搬出が危険
- 賃貸住宅の退去日が迫っている
- 介護や仕事で時間を確保できない
- 家族だけでは精神的につらい
業者へ依頼する前に、重要書類と形見を家族で確認し、複数社から見積もりを取ります。


遺品整理業者を選ぶときのチェックポイント
料金の安さだけで決めず、次の項目を確認しましょう。
- 訪問見積もりがあるか
- 作業内容と総額が書面に記載されているか
- 追加料金が発生する条件が明確か
- 一般廃棄物の処理方法を説明できるか
- 貴重品を発見した場合の対応が決まっているか
- 損害賠償保険へ加入しているか
- キャンセル料の説明があるか
「今日決めれば安くなる」と契約を急がせる業者や、見積書の内容が曖昧な業者は慎重に判断してください。
実家の片付けを家族で進める手順
ステップ1|家の安全確認をする
腐敗物、火気、水漏れ、戸締まりなど、放置すると危険な部分を確認します。
ステップ2|重要書類と貴重品を探す
書類、印鑑、通帳、遺言書、契約関係を優先します。
ステップ3|家全体を写真や動画で記録する
処分前の状態を残すことで、遠方の家族とも確認しやすくなります。
ステップ4|相続人で方針を決める
売却、賃貸、維持、解体など、実家を今後どうするか話し合います。
ステップ5|一部屋ずつ3分類する
玄関、洗面所、台所など、範囲の狭い場所から始めると達成感を得やすくなります。
ステップ6|売却・譲渡・処分方法を決める
価値がわからない物は、捨てる前に専門店へ査定を依頼します。
ステップ7|必要な部分だけ業者へ依頼する
大型家具の搬出や大量の廃棄物など、家族で難しい作業を依頼します。
遺品整理にかかる費用を抑える方法
遺品整理の費用は、物の量、部屋数、搬出経路、地域、処分品の種類などによって変わります。
費用を抑えるには、次の方法があります。
- 書類や衣類など軽い物を家族で分別する
- リサイクルできる物を買い取りへ回す
- 自治体の粗大ごみ制度を確認する
- 複数社から見積もりを取る
- 作業範囲と追加料金を書面で確認する
ただし、無理な搬出でけがをしたり、必要な物まで捨てたりしては本末転倒です。時間、体力、交通費も含めて比較しましょう。
気持ちがつらくて片付けられないときは
遺品を捨てられないのは、決断力がないからではありません。
物には、親との思い出や、もう会えない寂しさが結びついています。「捨てることが親を忘れることのように感じる」という方もいます。
そんなときは、次の方法を試してみてください。
- 写真に残してから手放す
- 小さな箱一つ分だけ形見を残す
- 迷う物は保留箱へ入れる
- 思い出を家族で話してから整理する
- 一日30分など時間を決める
片付けを急がなくてもよい状況なら、自分の気持ちが追いつくのを待って構いません。


よくある質問
親が亡くなった直後に、冷蔵庫の中身を捨てても大丈夫ですか?
腐敗する食品や衛生上問題のある物は、家を適切に管理するために早めの対応が必要です。ただし、相続放棄を検討している場合は、価値のある物の売却や大規模な処分とは区別し、作業内容を写真などで記録しておくと安心です。
兄弟に相談せず、自分だけで片付けてもいいですか?
後のトラブルを防ぐため、処分前に相続人全員へ連絡することをおすすめします。特に貴金属、写真、思い出の品、価値が不明な物は、写真を共有して合意を得ましょう。
遺品整理は四十九日が終わってから行うものですか?
一律の決まりはありません。賃貸住宅の退去期限や家の管理状況を優先しつつ、形見や思い出の品は気持ちが落ち着いてから整理しても大丈夫です。
実家を売るか残すか決まっていません
売却や維持を決める前でも、安全確認と重要書類の確保は進められます。不動産の名義、固定資産税、建物の状態、維持費などを調べてから家族で話し合いましょう。
まとめ|実家の片付けは「捨てる前の確認」が大切
親が亡くなった後の実家の片付けは、すぐに全部を終わらせる必要はありません。
大切なのは、次の順番です。
- 家の安全を確認する
- 相続人と遺言書を確認する
- 財産・負債がわかる書類を確保する
- 相続放棄の可能性を確認する
- 残す・保留・処分の3つに分ける
- 家族で方針を共有する
- 難しい部分だけ専門家や業者へ頼る
実家の片付けは、物を減らす作業であると同時に、親の暮らしを振り返る時間でもあります。
一人で背負わず、家族や専門家の力を借りながら、できるところから進めていきましょう。
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公開前チェック
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- 法律判断を断定せず、相続放棄を検討する読者には専門窓口を案内する
参考にした公的情報
- 政府広報オンライン「知っておきたい相続の基本」 https://www.gov-online.go.jp/article/202403/entry-5848.html
- 裁判所「相続・遺産分割」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/souzoku/index.html
- 法務省「自筆証書遺言書保管制度」 https://www.moj.go.jp/MINJI/11.html
- 裁判所「遺言書の検認」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html














