5年遡れる認知症の障害者控除|所得税・相続税・申請方法を元MSWが解説

確定申告・税金控除のイメージ

「親が認知症と診断されたけど、税金の控除って使えるの?」——MSW(医療ソーシャルワーカー)として働いていた17年間、こうした質問を受けたことは数えきれないほどあります。実は、認知症の方とその家族は複数の税制優遇・控除を受けられる可能性があります。知っているだけで年間数十万円の節税になることも。この記事ではMSW視点で、使える制度を網羅的に解説します。

⚠️ 注意:税制は毎年改正されます。実際の申告の際は税務署・税理士にご確認ください。この記事は一般的な情報提供を目的としています。
MSWロシク

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認知症の親の控除は「知らないと損する」制度ばかり。MSWとして17年、申請を諦めかけたご家族を何度も救ってきました。

目次

①障害者控除(最も重要・見逃しが多い!)

認知症の方に関して、最も見逃されている控除が「障害者控除」です。

障害者手帳がなくても、市区町村から「障害者に準ずる者」として認定を受ければ障害者控除が適用されます

障害者控除の金額

区分 控除額 認知症での該当目安
障害者控除 27万円 要介護1〜2程度
特別障害者控除 40万円 要介護3以上・常時介護が必要な状態
同居特別障害者控除 75万円 特別障害者と同居している場合

※詳細は国税庁「No.1160 障害者控除」もご確認ください。

障害者控除対象者認定書の取り方

  1. 市区町村の福祉窓口に「障害者控除対象者認定書」の発行を申請する
  2. 要介護認定の状況・日常生活の状況を審査される
  3. 認定書が発行されたら確定申告時に使用する
💡 MSWからのポイント:障害者手帳を持っていなくても、要介護3以上なら「特別障害者」に該当する可能性が高いです。控除額の差(27万円 vs 75万円)は非常に大きいので、必ず確認してください。認定書の申請は無料です。

②医療費控除

認知症に関わる医療費・介護費用の一部は、医療費控除の対象になります。

認知症で医療費控除の対象になるもの

費用の種類 対象
診察費・入院費・投薬費 ✅ 対象
訪問看護の費用 ✅ 対象
介護保険サービス(一部) ✅ 一部対象(居宅サービス等)
特養・老健の介護費・食費 ✅ 一部対象
おむつ代(医師の証明書付き) ✅ 対象(「おむつ使用証明書」が必要)
有料老人ホームの介護費 ✅ 介護費部分のみ対象

控除の計算式:(年間医療費合計 − 10万円)× 所得税率 = 節税額

例)年間医療費100万円・所得税率20%の場合:(100万円 − 10万円)× 20% = 18万円の節税

医療費控除の「10万円の壁」を正しく理解する

医療費控除は「年間の医療費が10万円を超えた分」が対象と思われがちですが、実は「10万円」または「総所得金額等の5%」のどちらか少ない方を超えた分が対象です。年金生活の親が単独で申告する場合、所得が少ないため10万円以下でも医療費控除を受けられるケースが少なくありません。

例)年金収入のみの親(総所得80万円)の場合:80万円 × 5% = 4万円 →年間医療費が4万円を超えれば控除可能です。

生計を一にする家族の医療費は合算できる

同居していなくても、仕送りや介護費用の援助をしていれば「生計を一にする」と認められます。別居の親の医療費を子が支払っている場合、所得の高い子がまとめて申告した方が、節税額が大きくなることが多いです。

💡 MSW現場メモ:兄弟姉妹で親の介護費を分担している場合、領収書をまとめて所得の高い人が申告するのが鉄則です。誰が払ったかは問われず、誰が申告するかで節税額が大きく変わります。

「おむつ使用証明書」の取得方法

おむつ代を医療費控除に含めるには、主治医が発行する「おむつ使用証明書」が必要です。寝たきりや認知症で排泄コントロールが難しい場合に発行してもらえます。

  • 主治医に「医療費控除のためにおむつ使用証明書を書いてほしい」と依頼
  • 2年目以降は市区町村の「主治医意見書」のコピーで代用可能な自治体もあります
  • 領収書とセットで5年間保管しておきましょう

よくある勘違い|医療費控除の対象外になるもの

  • 差額ベッド代(本人都合の個室希望):原則対象外(医師の指示があれば対象)
  • 人間ドック・健康診断:病気が見つからなければ対象外
  • 予防接種:原則対象外
  • 通院のタクシー代:歩行困難など医療上必要な場合は対象
  • 認知症の親に付き添う家族の交通費:1人通院が困難な場合は対象

③成年後見制度を利用している場合の控除

認知症が進行して成年後見制度を利用している場合、成年後見人への報酬は医療費控除の対象にはなりませんが、障害者控除の対象になる場合があります

また、被後見人(認知症の親)本人の確定申告を後見人が代わりに行うことも認められています。後見人になったら税務署に相談しましょう。

④相続税の障害者控除

認知症の方が亡くなった場合の相続において、相続人が障害者である場合に相続税が軽減される「障害者控除」があります。

  • 一般障害者:(85歳 − 相続時の年齢)× 10万円
  • 特別障害者:(85歳 − 相続時の年齢)× 20万円

例)70歳で相続し特別障害者の場合:(85 − 70)× 20万円 = 300万円の控除

⑤固定資産税の減免(自治体によって異なる)

一部の市区町村では、要介護認定を受けた方・障害者の方の固定資産税を減免する制度があります。お住まいの市区町村に確認してみましょう。

⑥年末調整での障害者控除(会社員のご家族向け)

認知症の親を扶養している会社員の方は、年末調整で障害者控除を申請できます。確定申告まで待たなくても、年末の手続きで間に合うので覚えておきましょう。

年末調整で申請する手順

  1. 障害者控除対象者認定書を市区町村で取得(11月までに準備しておく)
  2. 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の「障害者・寡婦・ひとり親又は勤労学生」欄に記入
  3. 認定書のコピーを添付して勤務先に提出

※会社によっては原本の提示を求められることもあるので、勤務先の総務担当に事前確認しておくとスムーズです。

💡 MSW現場メモ:「年末調整で申請し忘れた!」という方は、翌年2月〜3月の確定申告で還付申告すれば取り戻せます。5年前まで遡れるので、過去分も諦めずに税務署で相談してみてください。

申告・手続きのまとめ

制度 申請先 タイミング
障害者控除(認定書取得) 市区町村福祉窓口 年内(確定申告前)
医療費控除 税務署(確定申告) 翌年2〜3月
おむつ代証明書 かかりつけ医 年内
相続税障害者控除 税務署(相続税申告) 相続発生後10ヶ月以内

よくある質問

Q. 親が施設にいて同居していなくても障害者控除は使えますか?
A. 「同居特別障害者控除」(75万円)は同居が要件ですが、「特別障害者控除」(40万円)は同居不要です。施設入居中でも適用できます。

Q. 過去にさかのぼって申告できますか?
A. 確定申告は5年間さかのぼって修正申告が可能です。過去に申告していなかった方も、今から申告することで還付を受けられる可能性があります。

Q. 認知症でなくても要介護なら使えますか?
A. はい。障害者控除対象者認定は認知症に限らず、要介護状態であれば認定される可能性があります。

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申請は本当に大変ですが、年間数十万円の節税になることも。諦めずに役所や税務署に相談してみてくださいね。

まとめ|認知症の節税は「知って・申請する」が全て

認知症に関わる税制優遇は、すべて自分から申請しないと受けられない制度ばかりです。役所が親切に「あなたは控除対象ですよ」と教えてくれることは、まずありません。知らないと、年間数十万円損するケースも普通にあります

この記事のポイント整理

  • 障害者控除:認知症でも「障害者控除対象者認定書」があれば適用可(年間27〜40万円の所得控除)
  • 医療費控除:おむつ代・訪問看護・介護保険サービスの一部が対象。所得が低い親なら「10万円の壁」は気にしなくてOK
  • 相続税の障害者控除:(85歳 − 相続時の年齢)×10〜20万円が控除される
  • 固定資産税の減免:自治体によって有無や条件が違うため要確認
  • 年末調整:会社員のご家族は11月までに認定書を準備

【具体例】こんな家族はいくら節税できる?

「結局うちはどれくらい得するの?」とイメージしにくいと思うので、よくあるケースを2つご紹介します。

👨‍👩‍👧 ケース①:会社員の子が、別居の親を扶養している場合

母(75歳・要介護3・認知症、特別障害者認定あり):年金収入のみ、地方在住
息子(48歳・会社員、年収700万円):仕送りで母を扶養、東京在住

控除の種類 年間の節税額
障害者控除(同居老親等以外の特別障害者:40万円控除) 約12万円
医療費控除(年間医療費60万円・所得税率20%) 約10万円
合計 年間 約22万円の節税

→ 5年遡って申告すれば、最大約110万円取り戻せる可能性も。

🏠 ケース②:同居している親が自分で確定申告する場合

父(80歳・要介護2・認知症、一般障害者認定):年金収入200万円
娘(同居、専業主婦)

控除の種類 年間の節税額
障害者控除(27万円控除) 約2万円
医療費控除(年間医療費30万円・5%基準適用) 約2万円
合計 年間 約4万円の節税

→ 親の所得が低いと節税額は小さくなりますが、それでも申告しないとゼロです。

※実際の節税額は所得・医療費・家族構成・自治体により大きく異なります。上記はあくまで目安です。

まず何から始めればいい?3ステップ

  1. 市区町村の福祉課で「障害者控除対象者認定書」を申請(要介護認定を受けていれば交付されることが多い)
  2. 過去の領収書・医療費通知をまとめて整理(過去5年分まで遡って申告可能)
  3. 確定申告(2月16日〜3月15日)または年末調整で申請

💡 ところで…医療費そのものを抑える方法もあります

認知症の親の医療費が高額になっていませんか?月の医療費が一定額を超えた場合に窓口での支払いそのものを抑えられる限度額適用認定証」という制度があります。

税金控除で「戻すお金」と、認定証で「払いすぎないお金」、両方を組み合わせるのが賢い節約術です。

👉 限度額適用認定証とは?申請方法・自己負担額を元MSWが解説

※税制は毎年改正されるため、最新情報は国税庁ホームページや税務署・税理士にご確認ください。本記事は2026年5月時点の情報に基づいています。

介護にかかるお金は多岐にわたります。使える制度を最大限活用しながら、在宅での生活を支える選択肢も一緒に考えてみましょう。

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