「介護が必要になったけど、介護保険ってどこに申請するの?」「書類が多くて何から始めればいいかわからない」——そんな不安を抱えるご家族はとても多いです。
介護保険の申請は、知っていれば難しくありません。本記事では、元医療ソーシャルワーカー(MSW)として数百件の申請サポートをしてきた経験をもとに、申請から認定・サービス開始までの全ステップをわかりやすく解説します。
・介護保険の申請窓口と必要書類
・申請から認定通知まで(30日以内)の流れ
・認定調査で「正しく評価してもらう」ための注意点
・よくある失敗5つと対策
・認定に納得できない場合の対処法
第1章:介護保険とは
介護保険は、40歳から全員が加入する社会保険制度です。介護が必要になった時に、費用の1〜3割の自己負担でサービスを利用できます。
加入者の区分
| 区分 | 対象年齢 | 受給条件 |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 65歳以上 | 原因を問わず要介護・要支援状態になれば利用可 |
| 第2号被保険者 | 40〜64歳 | 特定疾病(16疾病)による要介護状態のみ |
要介護認定の7段階
| 区分 | 状態の目安 | 支給限度額(月額) |
|---|---|---|
| 要支援1 | 日常生活はほぼ自立。一部に支援が必要 | 50,320円 |
| 要支援2 | 要支援1より状態が重い | 105,310円 |
| 要介護1 | 立ち上がり・歩行が不安定。認知機能の低下あり | 167,650円 |
| 要介護2 | 歩行・入浴・排泄に一部介助が必要 | 197,050円 |
| 要介護3 | 入浴・排泄・食事すべてに全面介助が必要 | 270,480円 |
| 要介護4 | 日常生活全般に全面的な介助が必要 | 309,380円 |
| 要介護5 | 意思疎通困難・寝たきり状態 | 362,170円 |
第2章:申請から認定までの流れ
| ステップ | 内容 | 期間目安 |
|---|---|---|
| Step1 | 市区町村の窓口(または地域包括支援センター)に申請 | 即日 |
| Step2 | 認定調査員が自宅・入院先を訪問(74項目の調査) | 申請後1〜2週間 |
| Step3 | かかりつけ医が主治医意見書を作成 | 同時進行 |
| Step4 | コンピューター判定(一次判定) | 自動処理 |
| Step5 | 介護認定審査会での審査(二次判定) | 月1〜2回開催 |
| Step6 | 認定結果の通知書が届く | 申請から原則30日以内 |
| Step7 | ケアマネジャーを選び、ケアプランを作成 | 通知後1〜2週間 |
| Step8 | 介護サービス開始 | ケアプラン確定後すぐ |
第3章:必要書類一覧
| 書類名 | 入手場所 | 備考 |
|---|---|---|
| 介護保険要介護認定申請書 | 市区町村窓口・公式サイト | 本人・家族・ケアマネが記入可 |
| 介護保険被保険者証 | 65歳になると自動送付 | 紛失時は再発行可能 |
| 本人確認書類 | マイナンバーカード・健康保険証等 | 代理人は代理権の確認書類も |
| かかりつけ医の情報 | (参考情報として記入) | 病院名・医師名・電話番号 |
第4章:認定調査の内容と対策
認定調査は、調査員が自宅・病院を訪問して74項目をチェックします。この調査結果が要介護度に直結するため、「普段の状態を正直に伝える」ことが非常に重要です。
調査の74項目(主なカテゴリー)
| カテゴリー | 主な調査内容 | 項目数 |
|---|---|---|
| 身体機能・起居動作 | 寝返り・起き上がり・立ち上がり・歩行・視力・聴力 | 17項目 |
| 生活機能 | 移乗・移動・嚥下・食事・排尿・排便・口腔清潔 | 20項目 |
| 認知機能 | 意思伝達・記憶・徘徊・外出後不明になる等 | 9項目 |
| 精神・行動障害 | 幻視・暴言・不潔行為・介護への抵抗 | 15項目 |
| 社会生活への適応 | 薬の内服・金銭管理・日常の意思決定・集団への参加 | 6項目 |
調査員の前で「できます」と答えすぎると、実態より軽い認定が出てしまいます。「普段はできないこと」「介助が必要なこと」を、事前にメモにまとめて調査員に手渡しましょう。「調査時に詳しく話す時間がなかった」という声が非常に多いです。
調査員への申し送りメモの書き方
以下の情報を事前にメモにまとめておくと効果的です:
- 「できる・できない」ではなく「どのくらいの頻度で、どんな介助が必要か」を具体的に
- 最近1ヶ月で起きたトラブル(転倒・夜間の徘徊・失禁の回数など)
- 病名・服薬中の薬の種類
- 家族がいない時間帯の様子(一人でいると何が心配か)
第5章:要介護認定と使えるサービスの目安
| 認定区分 | 使えるサービス例 | 支給限度額(月) |
|---|---|---|
| 要支援1〜2 | 介護予防サービス(デイサービス・訪問介護・福祉用具貸与) | 5〜10万円 |
| 要介護1〜2 | 訪問介護・デイサービス・ショートステイ・福祉用具 | 16〜19万円 |
| 要介護3〜4 | 全サービス利用可・特養入居申し込み可(要介護3〜) | 27〜30万円 |
| 要介護5 | 全サービス・24時間対応型訪問介護 | 36万円 |
第6章:認定結果に不満がある場合
区分変更申請
認定後に状態が悪化した場合や、認定結果が実態と合わないと感じる場合は、区分変更申請ができます。次の更新を待たずに、いつでも申請可能です。
不服申し立て
認定通知を受け取った日から3ヶ月以内に、都道府県の介護保険審査会に審査請求(不服申し立て)ができます。書面で申し立てを行い、再審査を求めることができます。
第7章:申請でよくある失敗5つ
| 失敗 | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| ① 申請が遅すぎた | 症状が悪化してから慌てて申請→認定まで1ヶ月かかる | 「必要かも」と思ったらすぐ申請 |
| ② 調査で頑張りすぎた | 実態より軽い認定が出る | 普段の状態をメモで申し送り |
| ③ かかりつけ医を決めていない | 主治医意見書が書けず認定が遅れる | 事前に受診歴のある医師を確保 |
| ④ ケアマネ選びを後回しにした | 認定後にケアマネ探しに時間がかかりサービス開始が遅れる | 認定調査後から候補を探し始める |
| ⑤ 「軽いから申請しなくていい」と思った | 要支援でも使えるサービスは多い | 軽度でも申請して損はない |
よくある質問(FAQ)
Q. 申請したらすぐサービスを使わないといけないの?
A. いいえ。申請・認定を受けただけでは費用は一切かかりません。認定が出た後でも、サービスを使い始めるかどうかは自由です。「いざという時のために認定だけ取っておく」という使い方も有効です。
Q. 軽い状態でも申請していいの?
A. はい、早めの申請をお勧めします。要支援1〜2でも、デイサービス・訪問介護・福祉用具レンタルなどを利用できます。早期に介護予防サービスを使うことで、状態の悪化を遅らせる効果があります。
Q. 申請したら費用がかかる?
A. 申請・認定調査・ケアプラン作成(ケアマネジャーへの費用)は無料です。実際にサービスを利用した時だけ、1〜3割の自己負担が発生します。
Q. どの医療機関でも主治医意見書を書いてもらえる?
A. 原則として、現在定期的に受診しているかかりつけ医に書いてもらいます。受診歴のない医師には依頼できません。かかりつけ医がいない場合は、先に受診して関係を作る必要があります。
Q. 認定後にサービスを使わなくても問題ない?
A. まったく問題ありません。認定有効期間(1〜3年)中はいつでもサービスを開始できます。有効期間が切れる60日前から更新申請ができます。
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