十八歳になった子どもが、東京都立大学の合格通知を手にした。
その瞬間のことを、今でもはっきり覚えている。12月の冷たい空気の中、画面を見つめながら、しばらく何も言えなかった。じわじわと実感が込み上げてきて、気がついたら目が潤んでいた。
中学生のころ、この子のテストの順位は「下から数えた方が早い」レベルだった。通知表はオール3に2が混在していて、「この子、将来どうなるんだろう」と親として不安に思った夜が何度もあった。
それが今、東京都立大学に学校推薦型の総合型選抜で合格した。
この記事は、「うちの子、勉強が苦手で……」と悩んでいる親御さんや、自信が持てない受験生に向けて書いている。完璧じゃない子が、どうやって国公立大学への切符をつかんだか——その全記録を、親目線でありのままに書いていく。
📋 この記事でわかること
- 中学下位成績の子が都立大に合格した3年間の流れ
- 私立高校+国公立大学という進路戦略のメリット
- 塾の選び方(個別塾→集団塾の組み合わせ)
- 学校推薦・総合型選抜の実際の体験談
- 東京都立大学の学費メリット(年間200万円の差)
- 子育てで親が心がけたこと
第1章:中学時代——「勉強が苦手な子」として過ごした3年間
通知表の数字が物語っていたもの
うちの子が中学生のころの話をすると、「本当に同じ子?」と驚かれることがある。
当時の通知表は、5段階評価でオール3……ならまだいい方で、2が混じっているような状態だった。特に英語と数学は苦手で、定期テストのたびに「今回も厳しいな」という雰囲気が家の中に漂っていた。
学校の成績順位で言えば、正直なところ下から数えた方が断然早かった。クラスで30人いれば、25番から30番あたりをうろうろしているような感じだ。
ただ、誤解してほしくないのは、この子は決して「やる気がない子」ではなかったということ。部活も真剣にやっていたし、友達との関係も良好で、学校生活そのものはエンジョイしていた。ただ、勉強という場面になると、どこかでスイッチが入らない。「どうやって勉強すればいいのか」がわからない感じだったんだと思う。
高校選びという転機——親子でした「約束」
中学3年生になって、高校進学を具体的に考え始めた。この子の成績で公立高校を目指すとなると、偏差値50を超えるようなところは正直、難しい状況だった。
「私立高校にしようかな」と本人から言い出したとき、ひとつ大切な話をした。
「私立高校に行くなら、
大学は国公立を目指そう。」
——これが、親子でした約束
責めているわけでも、プレッシャーをかけているわけでもなかった。現実的な話として、私立高校+私立大学になると、教育費のトータルがかなりの額になる。一方で私立高校でしっかり学んで、国公立大学に進めれば大学の学費が大幅に抑えられる。特に東京都立大学は東京都民なら学費がほぼかからないという大きなメリットがある。
高校を選ぶとき、もうひとつ決定的な出来事があった。学校説明会で校長先生がこんな言葉を口にしたのだ。
「失敗してもいいよ。いっぱい失敗して。」
その一言が、心に刺さった。成績が振るわなかった子を持つ親として、正直ずっと「失敗させてはいけない」と力が入っていた部分があった。でも、この校長先生は違った。失敗を恐れるのではなく、失敗を通じて成長することを、堂々と肯定していた。この学校ならば、うちの子が萎縮せずに挑戦できると確信した。それが、この高校を選んだ決め手だった。
そして実際に入学してみると、期待以上だった。子どもの強みをちゃんと見つけて引き出してくれる先生に出会えたのだ。成績や偏差値だけで測るのではなく、「この子はこういうところが面白い」と個性を認めてくれる先生の存在が、本人の自信をぐっと押し上げてくれた。研究活動への参加も、その先生の後押しがあってこそだった。良い学校選びとは、偏差値だけではなく、こういう先生との縁も含めてのことだと、改めて感じた。
本人もその現実を受け入れて、「わかった、頑張る」と言ってくれた。こうして、ひとつの約束を胸に、私立高校への進学が決まった。
第2章:高校1年生——「やればできる」という自信の芽生え
最初のテストで起きた「奇跡」
私立高校に入学して、最初の定期テスト。結果を聞いたとき、正直、何かの間違いだと思った。
🎉 全学年で10位以内に入っていた
中学では下から数えた方が早かった子が、高校最初のテストで全学年上位に。
あとから話を聞くと、入学前から「最初が大事」と思って、授業の予習復習をていねいにやっていたらしい。中学と違って高校の授業はスピードが速い。その分「ちゃんとついていかないと」という危機感が、良い意味での緊張感を生んでいた。
そして何より大きかったのは、本人がこの結果から引き出した言葉だった。
「あ、やればできるんだ。」
たったひとこと。でも、この気づきがその後の3年間を根本から変えた。自信というのは、誰かに「あなたならできる」と言ってもらうことで生まれるんじゃなくて、自分が実際に「できた」という体験から生まれるものだということを、親として目の当たりにした瞬間だった。
親として心がけたこと——「余計な口を出しすぎない」
この時期、親としてすごく気をつけていたことがある。テストで良い結果が出たとき「次もこの調子で!」とプレッシャーをかけたくなる気持ちはある。でも、あえてそれをしなかった。
本人が「やってみよう」と思えた環境を大切にしたかった。結果に親が過剰に反応することで「成績のために勉強する」という意識になってしまうのが怖かった。「自分がやりたいからやる」という内側からの動機を、できるだけ守りたかった。
第3章:塾の選択——個別指導から大手集団塾へ
高1から始めた栄光の個別ゼミナール
高校1年生から塾に通い始めた。最初に選んだのは栄光の個別ゼミナールだった。英語と数学を中心に、先生と1対1の個別指導でしっかり教えてもらえる環境だ。
この選択は正解だったと思う。集団授業だと「わからなくても聞けない」「自分だけ取り残されているような気がして辛い」ということになりやすいが、個別指導ではそのストレスがない。苦手科目から少しずつ自信をつけていくのに最適だった。
栄光の個別ゼミナールの費用は、週1〜2コマで月額2〜3万円前後が目安(科目・コマ数により変動)。高1・高2の2年間、英数を中心にお世話になった。
駿台でライバルと切磋琢磨
個別塾で基礎が固まってきたころ、先生の勧めで駿台にも通うようになった。難関大を目指す仲間と切磋琢磨できる環境が、モチベーション維持に大きく効いた。駿台の費用は、月額3〜5万円前後(受講コース・科目数によって異なる)。高2後半〜高3にかけて通い、応用力と実戦力を鍛えた。
📚 うちの子の3本柱学習体制
| 場所 | 役割 |
|---|---|
| 学校の授業 | 基礎的な学習の流れをつかむ・内申点を積み上げる |
| 個別指導塾 | 苦手を徹底的につぶす・わからないをその場で解消 |
| 大手集団塾 | 応用力・実戦力を鍛える・仲間と刺激し合う |
成績の変化——上位5位以内、オールAへ
この体制が整ってからは、定期テストの成績が安定して上位をキープするようになった。
📈 成績の推移イメージ
中学時代の姿を知っているだけに、本当に別人のようだった。環境と自信がこれだけ人を変えるのか、と親として驚かされた3年間だった。
第4章:研究活動——ラボで全国大会へ
私立高校ならではの「探究」の場
この学校の良かったことのひとつが、研究・探究活動の場が充実していたことだ。学校には「ラボ」と呼べるような探究活動の場があって、興味のある生徒が参加できる仕組みになっていた。テーマを自分で設定して、実験や調査を行い、発表する——大学の研究室に近いような活動だ。
うちの子は高1の途中からこの活動に参加するようになった。最初は「何となく面白そう」という軽い気持ちで参加したらしいが、やってみると想像以上にハマった。
自分でテーマを決めて、仮説を立てて、検証して、まとめる。学校の授業で「正解を教えてもらう」のとは全然違う、能動的な学びだ。「正解がないものに向き合う」という体験が、この子の中で何かを変えていったんだと思う。
全国大会出場という実績
研究活動に取り組むうちに、成果が形になっていった。地区の大会を突破し、最終的には全国大会まで進むことができた。
🏆 研究活動の実績が推薦入試で大きく活きた理由
- 総合型選抜では「何に情熱を注いできたか」が評価される
- 全国大会レベルの実績は強力なアピールポイントになる
- 面接で「本当にやってきたこと」を自分の言葉で語れる
- 志望理由と研究テーマが結びついており説得力が増す
ただ、当時はそこまで計算していたわけじゃない。本人がただ「面白い」と思ってやっていたことが、気がついたら大きな財産になっていた——それが本当のところだ。好きなことに真剣に取り組む積み重ねが、思わぬところで活きてくる。このことを、この子の姿から教えてもらった気がする。
第5章:高校3年生——学校推薦の壁を突破する
都立大を目指すという決断
高3になって、進路を具体的に考え始めた。本人が強く志望していたのは東京都立大学のある学部。高校時代の研究活動と関連する分野であり、将来やりたいことへの道がそこにあると感じていた。
受験の方法としては、学校推薦型の総合型選抜を目指すことにした。3年間積み上げてきた成績と研究実績を活かせる推薦入試の方が、この子の強みを最大限に発揮できると判断した。
校内選考——7〜8人との競争
しかし、推薦入試にはまず「校内選考」という壁があった。同じ学部を志望する生徒が7〜8人いる中から、推薦枠を勝ち取る必要があった。
📋 校内選考の評価基準(3つの柱)
内申点・定期テストの結果が3年分評価される
全国大会出場などの実績が重要なポイントに
授業への取り組み方、部活・委員会活動など
これまでの3年間が、そのまま審査の俎上に乗せられる形だ。結果として、見事に推薦枠を勝ち取ることができた。1年生から3年生まで、コツコツと成績を維持し、研究活動にも真剣に取り組んできたことが、ここで報われた形だった。
第6章:総合型選抜——書類審査から面接、そして12月合格へ
書類作成という最初の難関
学校推薦を得て、いよいよ都立大の総合型選抜に臨んだ。まず最初の難関は書類審査だ。
- 志望理由書(なぜこの大学・この学部なのか)
- これまでの活動実績をまとめたポートフォリオ
- 研究内容の概要・成果報告
学校の先生にも何度もフィードバックをもらいながら、書いては直し、また書いては直しを繰り返した。「自分がやってきたことを言語化する」という作業が、自分を深く見つめ直す時間になったと、本人は言っていた。書類は無事に通過。次のステップへ進むことができた。
個人面接——3年間の集大成
書類審査を通過して、個人面接に臨んだ。面接では研究活動の内容について深く突っ込まれた。
💬 面接で聞かれた内容(例)
- なぜそのテーマを選んだのか
- 研究を通して何を学んだか
- うまくいかなかったことはどう乗り越えたか
- 大学でどんな研究をしたいか
- 将来どう社会に貢献したいか
でも、ここで活きたのが、本当に研究に向き合ってきた3年間だった。全国大会まで行ったのは、何かを「盛った」わけじゃない。本当にやってきたことだから、どんな質問が来ても自分の言葉で答えられる。体験に基づいた言葉には、やっぱり説得力がある。
面接を終えた本人は、「言いたいことは全部言えた」と言っていた。結果はどうあれ、やり切ったという顔をしていた。
12月——合格の通知
🎉
12月——合格通知が届いた
「言いたいことは全部言えた」と語った面接から数週間後
画面に「合格」の文字を見たとき、しばらく何も言えなかった。本人も、隣にいた私も、しばらくの間、ただ画面を見つめていた。その後、ふたりで少し泣いた。
「よかったね」「頑張ったね」——そんな言葉しか出てこなかったけれど、3年間のことがいっぺんに頭の中を流れていって、それで十分だった。
第7章:都立大という選択——学費という現実
東京都の私立高校授業料助成——意外と知られていないお得な制度
「私立高校は学費が高い」と思っている方に、ぜひ知っておいてほしい制度がある。東京都の私立高校授業料軽減助成金だ。
東京都では、都内在住の生徒が私立高校に通う場合、世帯年収に応じて授業料が大幅に補助される。国の就学支援金と合わせると、年収によっては授業料がほぼ実質無料になるケースもある。
💡 東京都私立高校授業料助成(令和6年度〜最新版)
令和6年度から所得制限を撤廃。どの世帯でも申請可能になりました。
| 制度 | 助成額(年) | 対象 |
|---|---|---|
| 国の就学支援金 | 最大約39万円 | 年収目安〜約910万円未満 |
| 東京都の授業料軽減助成金 | 不足分を上乗せ | 所得制限なし(令和6年度〜) |
| 国+都の合計上限 | 年額484,000円 | 都内私立高校平均授業料相当額 |
📌 ポイント:国の就学支援金と都の助成金は別々に申請が必要。申請は学校の事務室に確認してください。
うちの場合、助成を受けることで実際の授業料負担はかなり抑えられた。「私立は高い」と最初から諦めずに、まず制度を調べてみることを強くおすすめしたい。申請は学校を通じて行うので、入学後に先生に確認するだけでOKだ。
私立なら年間200万円——その差をリアルに計算
合格した都立大について、もうひとつ大事な話をしておきたい。本人が志望していた学部は、私立大学で同じ分野を学ぼうとすると、年間200万円前後の学費がかかる。
「私立高校に行くなら、大学は国公立を目指す」という入学前の約束は、こういう現実的な計算も背景にあった。私立高校の学費+国公立大学の学費という組み合わせが、長期的に見て家族にとって無理のない形だった。この判断が結果として正解になった。
教育費のことを子どもと正直に話すこと
少し話が脱線するかもしれないけれど、子どもと教育費の話をすることって、大事だと思っている。
「うちはこういう経済状況だから、大学はできれば国公立を目指してほしい」というのを、正直に話すことはひとつの選択肢だ。うちの子の場合、私立高校を選ぶタイミングでその話をしたことで、本人も「国公立を目指す理由」を自分なりに理解してくれた。それが、高校3年間のモチベーションの一部になっていたかもしれない。
子どもをひとりの人間として信頼して、現実の話をすることの大切さを、この経験から感じた。
第8章:3年間を振り返って——親として気づいたこと
「今の成績はその子の上限じゃない」
この3年間を通じて、一番強く感じたのはこのことだ。
中学で成績が下位だったとしても、それはその子の「限界」じゃない。環境が変わり、自信を持てる体験がひとつできるだけで、人はここまで変わる。うちの子が変わったのは、才能が突然開花したわけじゃない。「やればできる」という体験を積み重ねたことで、自分への見方が変わった。「どうせ自分には無理」という思い込みが崩れたとき、そこから先は本当に速かった。
環境の選び方が人生を変える
私立高校を選んだことが、ターニングポイントだったのは間違いない。ただ、これは「私立高校が公立より良い」という話じゃない。大事なのは、その子に合った環境を選ぶことだ。
どの高校が良いかは、子どもによって全然違う。偏差値だけで選ぶのではなく、「その子がどんな環境で力を発揮しやすいか」という視点で考えることが、高校選びのひとつのポイントだと思う。
口を出しすぎない、でも見守り続ける
塾を選ぶときも、勉強の方法も、研究のテーマも、基本的には本人に決めさせた。自分で決めたことは、自分でやり切ろうとする力が生まれる。うまくいかないことがあっても「自分で選んだことだから」という責任感が、諦めにくくしてくれる。
ただ、「口を出しすぎない」は「放っておく」とは違う。食事のときに話を聞いたり、疲れていそうなときには「無理しなくていいよ」と声をかけたり。結果に一喜一憂せず、「この子のことを信じている」という姿勢を、言葉じゃなくて態度で示し続けることを意識した。
「諦めない」の本当の意味
「諦めない」というのは、ただ同じことをやり続けることじゃない。うまくいかないときに方法を変える、助けを求める、環境を変える——それでも「目指すこと自体をやめない」という意味なんじゃないかと思う。
うちの子は、中学時代に結果が出なかったとき、「もう無理」とは言わなかった。方法を変えて(私立高校を選んで)、環境を変えて(塾に通って)、新しいことに挑戦して(研究活動に参加して)、それでもずっと「国公立を目指す」という目標は手放さなかった。その姿勢が、12月の合格通知につながったんだと思う。
まとめ——この3年間の全記録
📌 うちの子の3年間タイムライン
テストの順位は下から数えた方が早い状態
「やればできる」という自信を獲得。ラボ活動にも参加開始
研究活動で実績を積み上げながら学力も安定
12月に東京都立大学合格通知。都民なら学費もほぼ無料
💡 この記事から伝えたいこと
- 今の成績はその子の「上限」じゃない
- 環境の選び方が、人生を大きく変えることがある
- 自信は「体験」からしか生まれない
- 好きなことに真剣に取り組む積み重ねが、思わぬところで活きる
- 口を出しすぎず、でも信じて見守り続けることが大事
- 「諦めない」とは、方法を変えながら目標を手放さないこと
「うちの子、勉強が苦手で……」と感じている親御さんに、この話が少しでも「諦めなくていいんだな」という気持ちを届けられたら嬉しい。自分に自信が持てない受験生にも。今の成績は、あなたのすべてじゃない。
このブログでは、これからも子育てや教育にまつわる体験談を、親目線で正直に書いていく。よかったらまた読みに来てください。
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